2005 Fiscal Year Annual Research Report
ワーキングスタイルの多様化からみた郊外地域の変容に関する研究
Project/Area Number |
16520494
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
川口 太郎 明治大学, 文学部, 教授 (90195058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広松 悟 明治大学, 政治経済学部, 教授 (00242925)
中澤 高志 大分大学, 経済学部, 助教授 (70404358)
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Keywords | 郊外 / 家族 / 住居 / 就業 / 東京大都市圏 |
Research Abstract |
本研究の目的は,今日,戦後著しい発展を遂げた郊外地域が大きな転換点にあり,それが世代交代によって大勢を占めるようになった子世代の職業観や居住観の多様化に起因しているという認識にもとづき,郊外地域の展望を考えることにある。そのため本年度は典型的な郊外住宅地を事例としてとりあげ,家族の職歴や生活歴,職業観や生活観などを把握することを通じて,住宅地の持続可能性を検討した。調査を行った横浜市金沢区K地区は1960年代後半に造成・分譲され,大企業の上級ホワイトカラーであった人が多く住む「エリート住宅地」であるが,今日では他出した子世代の帰還がままならず,高齢化の進展が著しい。2005年3月にアンケート調査(回収数349,回収率17.5%)を行い,さらに同年8月、回答者のうち同意を得た20世帯に1〜2時間程度の聞取り調査を行った。 対象世帯の子世代は学歴や職業などの点で親世代の社会階層を継承しており,子どもの側に住宅地の社会的フィルタリングダウンをもたらす要因はない。しかしながら,親世代の約3割が子世帯との同居を希望しているにもかかわらず,同居率は必ずしも高くない。その理由は,世代間の摩擦を忌避する個人主義的な傾向があること,共働率が高い子世代にとって専業主婦の存在を前提に設計された住宅地がニーズを反映していないこと,良好な住環境を維持するための諸規制(用途地区や風致地区,建築協定)が完全分離型の二世帯住宅を困難にしていることなどである。したがって,将来的には転出する可能性を指摘する世帯が5割を超えている。 ここでとりあげた住宅地は,階層の再生産が可能であった(中流崩壊とは無縁であった)こと,良好な立地と住環境に恵まれ資産価値が維持されていることなど例外的な存在ともいえるが,それでも世代継承の難しさを物語っており,ライフステージに応じた積極的な住み替えを支援することが現実的な対応と思われる。
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