2006 Fiscal Year Annual Research Report
スールー海域世界におけるサマ語系民族集団の移動と越境に関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
16520498
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
床呂 郁哉 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (90272476)
|
Keywords | スールー海域 / サマ / 人の移動 / 越境 / 歴史人類学 / 東南アジア / 漁民 / 海賊 |
Research Abstract |
平成18年度はスールー海域世界を中心とするサマ人をはじめとする人や海産物等のモノの移動に関して東南アジア海域世界や環インド洋のイスラーム圏のネットワークとの連関などにも注目しながら前年度までに収集した民族誌的・歴史的資料に加えてフィリピンにおける調査ならびに英国においても国立公文書館、大英図書館、ロンドン大学等において新たに文献調査を実施し、そこで収集した資料も含めて調査研究と分析を実施した。この他に国内でも関西において関連する民族誌資料等の資料収集と分析を実施した。 本年度に収集された資料のなかでは特に英国の国立公文書館(PRO : Public Record Office)で収集したCO (Colonial Office)およびFO (Foreign Office)関連の資料は19世紀から20世紀にいたるスールー海域世界とその周辺地域に関する豊富な第一次史料と言えるものであり、これまでにフィリピンなどで実施した民族誌的調査による資料とあわせて歴史的再構成する際の重要なデータとして分析を実施した。 本年度の調査研究の成果の一部はすでに"Border Crossing and Politics of Religion in Sulu." Militant Islam in Southeast Asia (Asian Cultural Studies 15:SpecialIssue),pp.121-136,2006.および「「海賊鎮圧」から「対テロ戦争」へ-欧米の東南アジア関与における「長い持続」」『軍縮地球市民』第七号(2007年1月15日)pp.70-75.において公表している。 また同様にこれまでに得られた民族誌的・歴史的データを用いた研究知見の成果の一部は以下のふたつの口頭報告においても報告している。 (1)「移動、場所、アイデンティティ:スールー・ボルネオ周辺地域におけるサマ(バジャウ)人の事例から」2006年11月5日於国立民族学博物館・共同研究会「ユビキタス社会の物と家庭に関する研究」。 (2)「フィリピンのイスラーム-その歴史と現在」日本イスラム協会公開講演会。2006年12月3日東京大学文学部、法文2号館。 またこの他、本成果報告の執筆時点では刊行が間に合わなかったが現在、出版準備中の東南アジアの海賊に関する論集(ISEASより出版予定)でも拙論文"Piracy in Contemporary Sulu"が含まれる予定であることも付記しておきたい。
|