2005 Fiscal Year Annual Research Report
先住民族の文化享有権及び知的財産権の保障の実証的・比較法的研究
Project/Area Number |
16530014
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
常本 照樹 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (10163859)
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Keywords | 公法学 / 民族学 |
Research Abstract |
平取ダム建設にかかるアイヌ文化環境保全対策調査委員会の作業の最終年度に当たることから、最終報告作成の過程におけるアイヌ民族の文化享有権実現のあり方に注目し、作業に関与するとともに作業の一切をフォローした。特に先住民族の領域に係る開発等の際に遵守すべきとされるAkwe:Konガイドラインの意義と関連性について考察した。それらを反映する委員会最終報告書の内容の分析は次年度に行う。 本年度は2005年8月にオーストラリア・クイーンズランド大学のKamal Puri教授を迎えたシンポジウムに参加し、先住民族の知的財産権に関する諸問題の討究を行った。そこでは、アイヌ民族の事例、とくに伝統的デザインが出版社により無断使用された問題、キロロ、ニシパなどのアイヌ語が企業によって商標登録されている問題などを取りあげ、他の先住民族の類似の事例などとの比較を踏まえて検討を行った。 また、12月には、より基盤的な問題として、先住民族に関する研究への大学の関与のあり方、また先住民族自身による研究の実現への大学の寄与のあり方などについてハワイ大学及びウィスコンシン大学から自らも先住民である研究者を迎えシンポジウムを開催した。報告者は、自らの体験を踏まえ、先住民族自身の主体的参加の重要性を指摘した。大学そのものではないが、上述の平取ダムに関する調査委員会なども、その調査分析作業の中心はアイヌ系住民が担っているのであり、先住民族による主体的参加の実践と位置づけることができよう。 2006年1月には台湾国際法学会主催の先住民族の財産権に関する国際シンポジウムへの招聘を受け、アイヌ民族の財産権に係る歴史的諸問題、とりわけ共有財産に関する法制と裁判、並びに財産権と文化享有権の現代的実現ともいいうる「イオル構想」について報告し、台湾、ハワイ、インドネシアなどの先住民族の事例と比較検討を行った。
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Research Products
(4 results)