2006 Fiscal Year Annual Research Report
公法学の視点からみた多元主義と国家の中立性についての複合的研究
Project/Area Number |
16530020
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井上 典之 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70203247)
|
Keywords | 憲法 / 基本権 / 比較憲法 / ヨーロッパ人権 |
Research Abstract |
本年度は、研究期間の3年目として、昨年度までに行った研究の一端を、日本スポーツ法学会での報告として「スポーツにおける平等の諸次元」という形で、また、ドイツにおいて開催されたコロキウムでの報告「Die japanische Sicht und Situation der Grund- und Menschenrechte im Zeichen der Globalisierung」という形で、それぞれ年報に寄稿した(すでに校正は終了しており、後者は5月に公刊される)。それらは共に、基本権の内容の具体化を多元的な公的機関による執行を通じて行うことから全体的に見れば中立性の要請にかなうことになる文化的領域での分析、グローバル化が叫ばれる今日において、多元的な法源によって構成される人権・基本権保護の日本における片面的な実情の批判的分析として、本研究における中間的な成果を公表するものである。 なお、以上の研究成果の公表と共に、ヨーロッパ裁判所とドイツ連邦憲法裁判所の関係を、多元主義および国家の中立性の観点から問題提起するものとして、スポーツクジの国家による独占と職業の自由の侵害が最近のドイツ・ヨーロッパで議論されていることをうけて、その問題に関するドイツ連邦憲法裁判所の判決を概観し、ドイツ憲法判例研究会において報告を行った。これは、最近の憲法・基本権をめぐるヨーロッパでの新しい問題であることことから、今年度だけでなく、研究期間の最終年度である来年度に向けて、さらに研究を進めていく予定にしている。特に、国家の文化的中立性についての論拠だけで規制や国家の独占を正当化できず、むしろ担い手を多元的に展開することの要請がヨーロッパ・レベルでは基本権の実現との観点から展開されており、本研究のまさに中心的テーマに関わってくるものと考えている。それと同時に、すでに投稿済みではあるが、家族生活という個人のプライベートな問題にかかわるヨーロッパ人権の判例研究も現在並行的に行っている。
|
Research Products
(2 results)