2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本社会の変容と住宅保障システムの再構築に関する総合的研究
Project/Area Number |
16530034
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 岩夫 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (80154037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 基浩 和歌山大学, 経済学部, 助教授 (30283948)
武川 正吾 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 教授 (40197281)
寺尾 仁 新潟大学, 工学部, 助教授 (70242386)
平山 洋介 神戸大学, 発達科学部, 教授 (70212173)
松本 暢子 大妻女子大学, 社会情報学部, 助教授 (90183954)
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Keywords | 住宅保障システム / 福祉レジーム / 90年代不況 / 少子化・高齢化 / 住宅政策 |
Research Abstract |
1.本研究は、日本の住宅保障システム(社会成員の居住を保障する法・政策の総体)について、(1)それが現在直面している状況を1990年代以降の日本社会の変容と関係づけながら実証的に解明するとともに、(2)近年の福祉国家研究の中心テーマである福祉レジーム論の観点から理論的な考察を加え、さらにそれらの成果をふまえて、(3)今後の日本の住宅保障システムの再構築の方向性を探ることを目的としている。 2.2年間を通じた研究の成果は多岐にわたるが、その基本的なエッセンスは次の通りである。戦後日本の住宅システムは持家供給を拡張し、それを通じて中間層社会の形成を促した。所得上昇と雇用安定、夫婦と子の標準世帯・標準化したライフコース、そして持家取得による住宅改善と資産蓄積、これらの結合関係の集積が社会のメインストリームを構築するとみなされた。しかし、住宅保障システムとそれを取り巻く条件は1990年代以降不安定な状態に陥った。バブル経済の発生と破裂を契機として経済の確実さが失われ、雇用の流動化と所得停滞のために中間層社会の基盤は揺らぎ始めた。人口の構造はその減少と少子・高齢化によって大きく変化し、ライフコースと世帯形態は多様化した。標準世帯と標準ライフコースが「標準」である度合いは弱まり、既存の住宅保障システムが社会成員の居住を「保障」する機能も大きく低下した。本研究では、政府の住宅政策、住宅市場、住宅所有構造、企業の提供する住宅保障、住宅困窮、福祉レジーム論における日本の位置づけなど多様な問題領域に即して、上述のような戦後日本の住宅保障システムの揺らぎとその背景を分析した。変化する環境条件の下で、今後の日本社会では、単一の「社会のメインストリーム」を同定することは困難であり、また適切でもない。社会成員の異なるライフコースや家族形態に中立的で、多様な選択を許容する住宅保障システムの再構築が必要となっている。 3.以上の研究の成果は独立の論文集にまとめ、2006年度中に東京大学出版会から刊行の予定である。
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Research Products
(6 results)