2004 Fiscal Year Annual Research Report
競争法・政策の環境法・政策への対応に関する比較法的実証研究
Project/Area Number |
16530035
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
澤田 克己 新潟大学, 大学院・実務法学研究科, 教授 (40187290)
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Keywords | GATT / WTO / 貿易と環境 / 環境と戦争 / 内国民待遇 / 一般的例外 / WTO貿易と環境委員会 / CTE |
Research Abstract |
本研究は競争法・政策と環境法・政策の間の抵触とその解決の方法を比較法的手法を用いて解明することを試みるものであるが、平成16年度においては、国際的な次元の一つとしてGATT/WTOにおける「環境と競争」の問題領域へのアプローチを行った。 WTO諸協定においては、WTO協定前文において同協定の目的の一つとして環境の保護・保全が挙げられており、TBT協定、SPS協定、農業協定、補助金協定、TRIPS協定、GATS、1994年のガットにおいて環境と自由貿易(国際的自由競争)の関係にかかわる定めが見られる。とりわけ1947年のガットを引き継いでいる1994年のガットをめぐっては、環境と貿易に係わる多くのパネル報告書が出されている。3条(内国民待遇)が問題となった事例もあるが、20条(一般的例外)に関する報告書が圧倒的に多い。それらの報告書のいずれにおいても、国内政府の環境政策または健康政策は攻撃の対象とはなっていない。これは、WTO加盟国は自国の環境政策(貿易との関係を含む)、環境目標および環境立法の定立・施行を決定する自由を広範に有することを意味する。注目すべきなのは、これらの報告書は全て、問題となった貿易制限のガットとの不整合の判定を含み、かつ、ガット20条による正当化はないとの判断を含むことである。一般的にいって、パネルの20条解釈は狭いことが判明した。 このような状況の下、「WTO貿易と環境委員会」(Committee for Trade and Environment : CTE)が問題の解決の途を探っている。CTEはウルグァイ・ラウンドの最終合意への到達への障害となる可能性のあった貿易と環境の問題をWTO体制の成立後も継続的に審議、検討することとされたが、いまだに最終的な結論が出されていない。しかし、貿易と環境の相互支持性を高める観点から次の交渉に合意し、進展していることを解明した。(1)WTOルールと多数国間環境協定(MEAs)の特定の貿易義務との関係(交渉対象はそのようなWTOルールと当該MEAの当事国間での適用可能性に限定される)、(2)多数国間環境条約(MEA)事務局と関連するWTOの委員会との通常の情報交換に関する手続き及びオブザーバーの地位の承認基準、ならびに、(3)環境関連の物品及びサービスに対する関税及び非関税障壁の削減または、適切な場合の撤廃である。
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