2006 Fiscal Year Annual Research Report
競争法・政策の環境法・政策への対応に関する比較法的実証研究
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16530035
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
沢田 克己 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40187290)
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Keywords | ドイツ連邦共和国 / 環境と競争 / DSD社 / グリューネ・プンクト / 競争制限禁止法 / 廃棄物政策 / 連邦カルテル庁 / 保護に値しない競争 |
Research Abstract |
本研究は競争法・政策と環境法・政策の間の抵触とその解決の方法を比較法的手法を用いて解明することを試みるものであるが、平成18年度においては、環境先進国と言われ、また強力な独占禁止政策を推進しているドイツ連邦共和国における「環境と競争」の問題領域へのアプローチを行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 ドイツの廃棄物政策の延長線上に、Duales System Deutschland AG社(以下、「DSD社」)がある。しかし、DSD社の構成そのものに、ドイツ競争制限禁止法(以下、「GWB」)に違反する要素を含むことが問題視されている。とくに重大な問題とされているのは、DSD社は「グリューネ・プンクト」(以下、「GP」)の使用許諾料の徴収による財政システムを構築しているところ、これにより商品市場における流通業者の買手競争および売手競争が制限されることである。DSD社に参加する流通業者は、自主義務負担により、販売包装物上にGPが付された商品のみを発注し、したがってDSに接続される商品のみを消費者に提供する。参加流通業者はDSD社の枠内で、システムの意義と目的のゆえに、また、その機能力の維持のために、可能な限りGPが表示された商品のみを扱うよう努めるであろうことからして、競争制限的合意を禁止するGWB1条に違反することは明らかである。 DSDの存在そのものが市場経済の基本法であるGWBに違反するというかような状況においては、廃棄物回収・処理の業務を公的な生活配慮の分野から民間セクターに移動し、市場メカニズムの枠内で産業として再構築するドイツの構想は頓挫することになりかねない。その場合には、ドイツの環境政策の重要な柱の1つをなす廃棄物政策そのものが否定されることとなる。 かような状況に直面して、学説は法条競合に関する一般理論、合理の原則の導入、共同事業体の理論、「保護に値しない競争」の理論、違法性阻却の理論、衡量理論、内在理論、高次の法益としての公的意思の実行への協力の理論、信頼保護の原則といった多様な理論をもって臨んでいる。 連邦カルテル庁の実務においては、多様な局面での黙認が行われている。しかしこれに対しては、とくに法的安定性の見地から見て問題があると指摘されている。
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