2007 Fiscal Year Annual Research Report
競争法・政策の環境法・政策への対応に関する比較法的実証研究
Project/Area Number |
16530035
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
沢田 克己 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 教授 (40187290)
|
Keywords | 連合王国 / イギリス / 環境と競争 / 1998年競争法 / 政府補助金 / EC競争法 / 欧州委員会 |
Research Abstract |
本研究は競争法・政策と環境法・政策の間の抵触とその解決の方法を比較法的手法を用いて解明することを試みるものであるが、平成19年度においては、連合王国(イギリス)における「環境と競争」の問題領域へのアプローチを行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 イギリスは欧州共同体(EC)との法的な調和の実現を目的の一つとして、1998年にその競争政策法を大幅に改め、名称を「1998年競争法(Competition Act 1998)」に変更した。この改正により、イギリスはかつての弊害規制主義からEC条約81条にならった原則禁止主義(prohibition-based system)に移行した(同法第2条)。1998年改正は、これだけに止まらない。すなわち、同法の採用するシステムは、EC独禁法に直接的にならったものとなっており、イギリスの裁判所は欧州委員会の関連する決定又はステートメントを顧慮しなければならない(同法60条3項)。したがって、EC法における経験は本法のイギリス国内における適用を方向づけることになるのであり、本法の運用機関は、EC法における先例を厳格に守ることを求められる。 かかる基本構想のゆえに、イギリスにおける競争法と環境の関係は、EC競争法における状況と同じであるとみてよい。イギリスにおいては、現在のところ、環境と競争の抵触関係は直接には大きな問題として顕在化していないが、政府補助金が事業者による環境保全方針のために支給されることがあり、それが競争に及ぼす影響が懸念されている。この点については、前述の基本構想に従い、イギリスは欧州委員会の政策に沿う展開を示している。即ち、欧州委員会の開発政策によれば、補助金は一般の利益の向上がある場合に水平的に支出されるべきである。この一般の利益には環境保全が含まれるところ、欧州委員会の規則(Regulation 994/98/EC, 0J l998, L142/1)がそれの一括適用除外を設けている。この規則は特定の種類の水平的補助金ごとに適用除外となる基準を定めているが、環境補助金について、イギリスはそれと同様の判断を行っている。
|