2006 Fiscal Year Annual Research Report
パーマネンシープランニングに基づく要保護児童の法的保護に関する研究
Project/Area Number |
16530039
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
鈴木 博人 中央大学, 法学部, 教授 (90235995)
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Keywords | パーマネンシー / パーマネンシープランニング / 里親制度 / 養子制度 / 親権 / 児童福祉法 / 児童ならびに少年援助法 / 要養護児童 |
Research Abstract |
日本の親子法・児童福祉法には、子どもの時間感覚を重視したパーマネンシーという考え方が取り込まれて制度設計がなされているとはいえない。このことは、必ずしも例えば児童相談所の実務においてパーマネンシープランニングという発想が存在しないということではない。パーマネンシープランニングを実施していくための具体的なプログラムがなお不十分であるという実情がある一方、法制度上パーマネンシーを保障していく仕組みができていないことに大きな問題がある。このことの意味は二つある。一つは例えば、他児養育制度である、里親制度、養子制度、それらと密接な関係をもつ親権制度が、それぞれの制度としては日本法でも用意されているが、個々の制度が子どもの保護、必要な養育の付与とその保障、そして安定的で永続的な家庭の確保という流れの中に位置付けられて考えられていないということである。それぞれの制度は身分関係の変動や確定の制度としては民法に規定されているが、要保護児童のニーズに対応して、子どもの処遇が段階的に行われていくという仕組みになっていないということである。もう一つの意味は、上記のように要養護児童のニーズに段階的に合わせて十分には構想されていないとはいっても、個別の制度としては存在する里親制度、養子制度、親権制限制度を実務において有機的に関連させて使うということもなお行われていないということである。 以上のような日本の実情分析を踏まえて、昨年度行ったドイツ・デュッセルドルフでの聞き取り調査の結果と照らし合わせて検討を加えた。その結果、ドイツ法での要養護児童の処遇に関する法制度は、親権(ドイツ法では親の配慮という)法、養子法という民法上の制度に基礎付けられているということ(日本民法には里親制度についての規定は存在しない)、そしてその上で、具体的な処遇手続、処遇計画は児童ならびに少年援助法に詳細に規定されているという構造が明らかになった。そのなかで、子どものパーマネンシーの保障という点でいうと、重要なのは同法36条に規定されている援助計画の作成である。その援助計画書の翻訳を行い、ドイツでの援助計画策定実務の一端を明らかにした。
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