2005 Fiscal Year Annual Research Report
公務員腐敗犯罪の刑事訴追についての国際的比較研究(中国・米国・日本)
Project/Area Number |
16530042
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
王 云海 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (30240568)
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Keywords | 腐敗防止条約 / 国際法 / 国内法 / 立法 / 現実の刑事司法 / おとり捜査 / 人権保障 / 腐敗対策と人権保障の両立 |
Research Abstract |
17年度は、当初の予定のように、二つのことを中心に研究を行ってきた。 まず、国連の腐敗防止条約などの国際的条約や規約のなかで定められた「腐敗」概念と中、米、日の国内法上の「腐敗」概念との関係を詳しく検討した。その結果、同じ「腐敗」と言っても、中、米、日三国の国内法での理解は実はかなり異なっていることが分かった。中国は国連の腐敗防止条約などの国際的文書上の「腐敗」概念を最大限に解釈して、国内での腐敗対策を強化し、他国からのさらなる協力を得ようとしている。米国は終始「市場自由競争原理」を至上として国際的文書上の「腐敗」概念を広げたり狭めたりして、国際的腐敗対策を国内での自由競争のために捉えている。日本は国際的文書上の「腐敗」概念をなるべく国内法上の概念との統一をはかり、日本国憲法などの国内法との整合性を保ちながら腐敗対策を遂行しようとしている。 次に、上述した立法レベルだけでなく、現実の刑事司法のレベルにおいては国際的条約や規約の定めた腐敗対策がどのように扱われているのかをも検討した。特に、中国について、中国の検察理論研究所などの機関の協力を得て、江蘇省などで腐敗対策の実態を調査して、次のような重要なことが判明された。一つは、中国では末端の司法機関までが国連の腐敗防止条約などを熟知しており、それに沿った腐敗対策を展開しようとしていることである。もう一つは、国連の腐敗防止条約などで容認された「おとり捜査」などは、人権保障が「行き過ぎた」ところは問題にならないかもしれないが、人権保障の意識が薄い刑事司法ではその危険性が想像以上に大きい。そのために、腐敗対策と人権保障との両立は国際的条約や規約の制定にあたってはそれを常に意識すべきである、ということである。
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Research Products
(2 results)