2004 Fiscal Year Annual Research Report
刑事手続における少年の手続参加の保障に関する日米英比較法研究
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16530047
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
葛野 尋之 立命館大学, 法学部, 教授 (90221928)
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Keywords | 手続参加 / 適正手続 / 少年 / 被害者 / 意見陳述 / 意見聴取 / 特別少年裁判所 / ヨーロッパ人権条約 |
Research Abstract |
一般に適正手続の本質的要請として、被疑者・被告人が自己の刑事手続に実効的に参加する権利が保障されなければならない。とくに情緒的・知的に未成熟な少年の場合、手続参加の保障をめぐって深刻な問題が生じる。これについて、本年度においては、とくに次の具体的問題について研究を進めた。 少年審判における被害者の意見聴取の場合、少年、被害者双方の状況、被害者の希望、審判廷での意見陳述が少年の心情に与える影響などを考慮したうえで意見聴取の方法が決定されており、実務上、審判廷における少年の面前での意見聴取の例は少ない。これに対して、刑事手続上の被害者の意見陳述の場合、原則、公判廷における少年の面前での意見陳述がなされている。本来、刑事手続の場合にも、少年、被害者双方の状況、被害者の希望、審判廷での意見陳述が少年の心情に与える影響などが考慮されるべきであり、現行刑訴法の解釈として他の方法による意見陳述が困難なのであれば、立法的解決が必要とされる。 少年の刑事手続において、検察官、裁判官が、被害者の期待・要求に応えるためとしつつ、少年の「反省」と「謝罪」を強要しながら、少年の犯罪行為、あるいは少年の供述などについて、人格非難の意味を含むような厳しい言葉を用いて、少年を攻撃する例がみられる。このことは、かえって少年の内省を停止させ、その「修復的責任」の自覚を阻害するだけでなく、自己の刑事手続への参加を妨げる効果を有している。 イギリスにおいては、1999年のヨーロッパ人権裁判所判決を受け、2000年、首席判事による「実務指令」が出され、さまざまな手続上の配慮が定められた。その後、人権裁判所判決の要請に応え、その趣旨を生かすべく、刑事法院における少年裁判を廃止して、「特別少年裁判所」の設置が提案された。しかし、陪審裁判の制限について批判が強く、この提案は実現しなかった。さらに、2004年には刑事法院における少年裁判が少年の手続参加を阻害し、公正な裁判を受ける権利を侵害した人権裁判所判決が再度出され、これを受けて改革が検討されている。
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Research Products
(7 results)