2006 Fiscal Year Annual Research Report
親権は果たして強いのか-家族に対する国家の介入の根拠とその基準
Project/Area Number |
16530053
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
山口 亮子 山梨大学, 教育人間科学部, 助教授 (50293444)
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Keywords | 子どもの代理人 / 裁判所任命特別擁護人 / CASA / 児童虐待 / 訴訟後見人 / GAL |
Research Abstract |
アメリカ親子法分野の手続のなかで、弁護士が子どもの代理人となる制度は広がりを見せているが、果たしてそれは子どもの権利思潮から発生し、子どもの権利を体現しているものとなっているのであろうか。州法は代理人は子どもの利益を代理すると規定しているのに対し、アメリカ法律家協会(ABA)等が公表している規範は、子どもの意思を代理することを重視しており、代理人の役割について、州法が規定するものと実務家・研究者が求めているものでは幾分か乖離が生じている。 本研究ではカリフォルニア州(以下、Calと略す)を中心に子どもの代理人制度について調査を行った。 Cal法では、「子どもが代理人により代理されていない場合、裁判所は代理人の任命が子どもに利益でないと認定しない限り、代理人を任命しなければならない。…子どもの代理人は、検察官、公設弁護人、または弁護士会め他のメンバーが可能である」。(CWI317(c)(2006))と規定しているが、性的虐特等刑事事件においては検察官が代理人となっている。弁護士は、NPOであるLegal Services for Children(LSC)から選任されることが多い。当該事務所は子どもの法律相談を無料で行っており、活動は専ら寄付で賄っている。虐待の他、移民、学校の規則・体罰問題、妊娠・中絶問題等に対して電話相談を受付け、子どもの代理人として法廷に立っている。当該所属弁護士にインタビューしたところによると、弁護士は子どもの意思を聞きつつも子どもの最善の利益を探り、必ずしも単独ではなく裁判所と協議の上で子どもの処遇を決定しているとのことであった。 代理人とは別にCASA(Court Appointed Special Advocate・裁判所任命特別擁護人)も子どもの代理人として活躍している。CASAは児童虐待手続に関する連邦法(CAPTA)においても訴訟後見人(GAL)の一員として認められており、全米に存在しているが、調査を行ったCalでは訴訟代理人はCASAではなく弁護士が行っている。CASAは弁護士と共に子どもと対話し調査を行っているが、全ケースの10%しかついていない。CalでCASA事務所を取り仕切っているのはJudicial Council of CaliforniaのCenter for Families, Children and the Courtsであり、郡や市がCASAを組織する場合の経費や寄付、運営方法などを指導している。他州と比べ州政府がCASAの活動に責任を負っており組織的である。
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