2004 Fiscal Year Annual Research Report
子の監護事件の統合的解決と法的判断基準の確立に関する研究
Project/Area Number |
16530060
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
常岡 史子 獨協大学, 法学部, 教授 (50299145)
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Keywords | 民法 / 家事審判法 / 離婚 / 親権 / 監護権 / 面接交渉 / 人事訴訟 / ドイツ |
Research Abstract |
「子の監護事件」について、(1)離婚時の親権者・監護者の指定、(2)離婚後の親権者・監護者の変更、(3)子の引渡し請求、(4)面接交渉の4つの観点から、民法および家事審判法の法解釈学的問題を考察するとともに、家庭裁判所における具体的な処分の実状を検証した。さらに、ドイツの家庭裁判所およびユーゲントアムト(少年局)の活動を調査することにより、日本での問題解決の方向性を分析・検討した。 子の監護事件の9割以上は、両親の離婚やそれを前提とした別居に伴うものであり、子の処遇が離婚における夫婦の紛争の主要部分をなしていることがわかる。その背景には、離婚により単独親権への移行を必須とし、親権者の決定を離婚届の記載事項とする現行法制度の枠組みがある。さらに、民法は、親権者・監護者の判断に際して「子の利益」の考慮(766条、819条)という概括的基準を与えるにとどまるため、家庭裁判所実務では、監護の継続性尊重、幼少の子に関する母性優先等学説の成果を取り入れた諸原則を用いて対応してきているが、いったん決定がなされた後に子の引渡しや親権者・監護者の変更を求める申立てがしばしば行われることは、当事者の納得を得た解決達成の困難さを示している。本研究では、この問題への対処としてドイツの法制度に注目し、実体法・手続法両面で、監護(親権)者指定、面接交渉、子の引渡しの統合的処理を旨とするその仕組みを分析・考察した。さらに、本年度はバーデン・ヴュルテンベルク州を主たる対象として、ドイツの家庭裁判所とユーゲントアムトに関する調査を実施し、家事事件専門の裁判官と弁護士がユーゲントアムトと密接に協力し法律の規定に支えられて夫婦・親子関係の調整に積極的に介入する態様を検証した。次年度は、本年度の成果をもとに、人事訴訟移管後の家庭裁判所における離婚調停・審判・訴訟での子の監護措置の統合的解決の可能性について、さらに考察を進める予定である。
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