2004 Fiscal Year Annual Research Report
第二次世界大戦直後におけるソ連勢力圏の形成とスターリンの対外認識
Project/Area Number |
16530104
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
栗原 浩英 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (30195557)
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Keywords | スターリン / 冷戦 / 国際共産主義運動 / ソ連 / 超大国 / 世界戦略 / グローバル |
Research Abstract |
ロシア国立社会政治史文書館において,スターリン関係ファイル,特にインド共産党,インドシナ(ベトナム)共産党,インドネシア共産党,中国共産党ファイルの閲覧および関連資料の収集にあたった。また,本研究課題申請書提出直後,2004年1月より,中国外交部档案館(北京)が本研究課題の対象とする時期とも重なる1949〜55年の資料公開を開始したため,中ソ関係,中国・ベトナム関係,朝鮮戦争関係資料を同館で閲覧・調査した。その結果,以下の諸点を明らかにすることができた。 1.当該時期の国際共産主義運動の構造は極めて単純なものであった。各共産党は自党の内部で決着できない問題をモスクワに持ち込んでは,スターリンの裁可を仰いでいた。これは,コミンテルンはすでに解散していたとはいえ,モスクワを国際共産主義運動の中心とみなし,そこから何らかの指示を得て行動しようとするベクトルが各国共産党の側から発せられていたことを意味する。 2.スターリンの各共産党に対する指示は,具体性を追究しようとしている点で一致している。すなわち,スターリンは漠然とした「帝国主義」論を嫌い,イギリス帝国主義,オランダ帝国主義など個別具体的な対象を設定した戦略の構築を各党に指示した。これらの点をみてもわかるように,スターリンは問題を普遍化・一般化して自らのあるいはソ連としての世界戦略を構想するという段階には至っていない。唯一,スターリンは中国共産党にアジア地域の共産党の指導をまかせようとする一方で,同党の革命路線が普遍化することに異議を唱えようとしていた点に,世界戦略形成の萌芽をみてとることができるが,それは死去直前の時点のことであった。
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