2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530146
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢坂 雅充 東京大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (90191098)
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Keywords | 放牧酪農 / 酪農メガファーム / トレーサビリティ / 不足払い制度 / チーズ政策 / オセアニアの酪農乳業 / 自給飼料生産 / 草地の多面的機能 |
Research Abstract |
日本の酪農乳業の国内および国際的な市場環境の変化について、調査研究を行った。 国内では、放牧酪農への関心が高まっているいっぽうで、大規模企業的酪農経営である酪農メガファームや家族経営を基礎としながら雇用を導入した大規模酪農経営への期待が高まっている。両者の経営基盤の特徴をあきらかにするとともに、いずれも独自の生乳販売志向を高めていることを確認した。こうした生産基盤の変化をふまえて、不足払い制度を支えている指定生乳生産者団体制度、生乳共販制度の弾力的な運用が求められていることを検討した。 あわせて、酪農は畜産のなかでも粗飼料を多く利用する部門であり、粗飼料の自給が経営基盤の確立という観点だけでなく、食料自給率の向上という点からも注目されている。そこで酪農を中心として粗飼料、とりわけ牧草の自給という政策目標の意義、課題について検討し、(1)不足払い制度、土地利用型酪農推進事業、中山間地域直接払いといった直接払い制度と連携あるいは再編統合した草地への直接払い、(2)草地の多面的機能をめぐる社会的合意形成の重要性を指摘した。 国際的な市場環境については、昨年度に引き続き、オセアニアをはじめとする乳製品輸出国における安全・安心対策の進展について検討した。乳製品製造過程にとどまらず、流通過程に踏み込んだ製品管理の徹底、トレーサビリティの確立が、重要な政策プロジェクトとして取り組まれている。具体的には、オーストラリアとアメリカ合衆国の国際トレーサビリティプロジェクトについて調査を行った。 こうした乳製品輸出国の関心はとくに国際価格が高騰しているチーズの輸出に向けられている。チーズの輸出市場として拡大が見込まれているのは、日本および経済成長が著しい中国などのアジア市場である。今年度は、チーズ奨励金制度やチーズ製造プラントの再編統合で国産チーズ増産という政策に転換した日本のチーズ政策へのインパクトについて検討することにした。
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