2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530146
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢坂 雅充 東京大学, 大学院経済学研究科, 助教授 (90191098)
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Keywords | 不足払い / チーズ / 酪農乳業 / 中国 |
Research Abstract |
一つは、国内での不足払い制度のなし崩し的な機能変化についての検証である。WTO農業交渉の合意にもとづいて将来、乳製品の関税相当額が引き下げられることを想定して、牛乳の不足払い制度の補給支払い機能が実態として拡張されてきたことについて、関係機関・企業などへのヒアリング調査にもとづいて論点を整理した。具体的には、バターや脱脂粉乳などの加工原料向け原料乳だけでなく、生クリーム等の液状乳製品、発酵乳、さらにチーズ向け原料乳にたいする奨励金が、恒常的な政策として位置づけることの政策的な意義や課題を整理した。相対的に加工原料用途の比重を押し下げる政策誘導の中で、乳価変動に基づく需給調整が機能不全に陥り、過剰乳製品を擬似的で限定的な市場メカニズムによって処理する仕組みに依存せざるを得なくなったこと、さらに短期的に急増する余乳の処理がきわめて難しくなり、北海道での生乳廃棄が頻発する可能性を提示した。 いま一つは、WTO体制下での中国の牛乳乳製品市場の急拡大と日本の酪農・乳業との関係性についてである。内モンゴル自治区の酪農・乳業の急成長を支えてきた基盤、いわば発展メカニズムとそのもとでの酪農生産基盤の脆弱性を検討した。それをふまえて不足払い制度のもとで発展を遂げてきた日本の酪農・乳業の成長要因を再検証する論点を提示した。具体的には中国での乳牛価格が乳価水準を大きく上回って推移するなかで、酪農経営のバブルともいえる乳牛売買による経営展開が広がり、乳価下落による家族酪農経営の停滞、新たな法人経営組織への担い手の転換が進みつつあることを論じた。
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