2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本自動車産業における「系列の解体」と地域集積構造の変動に関する調査研究
Project/Area Number |
16530154
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
藤原 貞雄 山口大学, 経済学部, 教授 (10034878)
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Keywords | 系列解体 / 地域集積 / 産業集積 / 自動車産業 / 相関分析 / 人口 / 民力 |
Research Abstract |
1 研究目的 日本自動車産業の国際競争力の重要な源泉の一つは、組み立てメーカーと部品メーカーとの間に形成された「系列的取引関係」であり、そうした関係の「地域空間」が自動車産業の地域集積であるとされてきた。1990年代以後の世界自動車産業の国際的再編成は、こうした「系列的取引関係」を変容させ、したがって地域集積を変化させつつある。本研究は、そうした変容過程にある自動車産業の地域集積構造の変動を追求することを意図している。 2 本年度の主要研究内容 本年度の研究は、2002年度「工業統計表 工業地区編」によって抽出した自動車産業集積地23工業地区の主要自動車関連事業所のある25市町をモデルとして取り上げ、1991〜2002年までの市町の経済変動と自動車産業との相関関係を統計的実証分析することにほぼ費やされた。得られた知見は次のようなものである。 (1)愛知型集積地(愛知県の4工業地区)においては、自動車産業とモデル市の経済との間には強い相関関係があるという仮説は、4工業地区の従業者数および出荷額が順調に増加したという背景のもとで、モデル市町の人口増加、製造業出荷額に関しては支持される。 (2)準愛知型(静岡県の2工業地区)においては、自動車産業とモデル市の経済との間には強い相関関係があるという仮説は、磐田市については支持されるが、浜松市については支持されない。 (3)「製造業に占める自動車産業の比重」によって自動車産業と地元経済との間には強弱様々の相関関係があるという仮説は支持されない。 (4)大都市圏型においては、相関関係は認められないという仮説は支持されない。横浜市や川崎市においては正あるいは負の相関関係が認められる。 (5)いったん出来上がった自動車産業集積地は、周辺より高い産業力を蓄え、人口維持能力を高める。自動車産業が負の変動(従業者の減少等)をたどっても、集積地の民力はただちには減少しない。集積地の人口、民力の変動はもっと多様な要因によって引き起こされる。 3 今後の研究計画 以上の成果は2つの学会(日本中小企業学会全国大会、中四国商経学会17年度大会)で報告し、現在3編の論文を印刷中である。次年度は25市町の経済実態をさら詳細に分析したうえでとりまとめをおこなう。
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