2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530163
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋葉 弘哉 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60138576)
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Keywords | 国際経済学 / 経済政策 |
Research Abstract |
当該研究はラテン・アメリカやアジア諸国で起きた通貨危機の原因は、民間企業のバランスシートの悪化に起因するという、いわゆる「第3世代モデル」を定式化し、その実証的な含意も併せて検討しようとすることを目的としている。このような認識に立つと、これまでの通貨危機の分析モデルとして知られている「第1世代」モデルはファンダメンタルズの悪化により通貨危機が惹起されたという意味で、どちらかといえば金融面にのみ焦点を当てていたと思われる。また「第2世代」モデルにおいても、期待により通貨危機が自己実現的に発生するという意味では、やはり金融面を強調していて、ややバランスを欠いた分析になっている。 そこで当該研究では、特にアジア通貨危機において観察された企業のバランスシートの悪化が次期の投資を低下させ、従って資本ストックが低下し、何らかの外生的な攪乱が生じた場合に通貨危機に陥るのではないかという問題意識の下に、経済の「実物面」をも分析対象とし、均衡点は実物部門と金融部門の同時的な均衡で達成されるとして分析を始めている。 企業のバランスシートの悪化は投資の低下を導き、従って長期利潤の割引現在価値を低下せしめることになるという点に着目して、現在の段階で「2期間」の簡単な異時点問モデルを構築し、金融部門を包摂した均衡点の定式化を試みている。外生的な攪乱については、生産性の低下、外生的資金調達の困難さ、外国利子率の上昇を考慮したモデル分析を行っている。本年度の予備的な研究で、方向性としては間違っていないという確証が得られたので、次年度はこれまでの分析を精緻化して学術論文として仕上げるように、引き続き鋭意努力致したい。
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