2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530163
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋葉 弘哉 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60138576)
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Keywords | 国際経済学 / 経済政策 |
Research Abstract |
昨年度に引き続いてバランスシート効果が通貨危機を引き起こしたという仮説を集中的に検討した。モデル分析に入る前に、まず理論分析のサーベイを纏めてみた。特に第三世代モデルでバランスシート効果が提示されるに至った経緯について、前二つの第一世代、第二世代モデルといわれるものの不完全性を明らかにした。特に第一世代モデルでは、ファンダメンタルズの悪化が通貨危機を引き起こすとしているが、ファンダメンタルズの悪化を引き起こす要因については言及していない。第二世代モデルでは、通貨危機を自己実現的な期待と、その結果としての複数均衡によって引き起こされるとしているが、不安定均衡点が通貨危機の状態であるとすれば、その不安定均衡が維持されるはずは無く、その後の状態に関して何も説明できていない。 そして第三世代モデルでも、「初期モデル」と「真のモデル」といわれるものがあることを明らかにした。初期のモデルでは、モラル・ハザード問題と金融脆弱性が問題とされていたが、これらが通貨危機の要因としては不完全であることを明らかにした。そして「真の第三世代モデル」においては、「伝染効果」、「トランスファー問題」、および「バランスシート効果」が分析されなければならないが、通貨危機においては、特に「バランスシート効果」の分析が不可欠であるという点を明らかにした。 バランスシート効果の実証研究は、既に中南米6カ国について集中的に行われている。その結果は、必ずしもこの仮説にとって良好ではないことが判った。 これらの先行研究の結果を受けて、私の独自モデル分析を展開し、実物市場と貨幣(資産)市場の相互作用により、実物市場におけるバランスシート効果が通貨危機を引き起こす可能性のあることを、理論的・実証的に明らかにした。
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