2006 Fiscal Year Annual Research Report
下請取引分析におけるホールドアップ問題の検証と公取委の法運用成果
Project/Area Number |
16530187
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
増田 辰良 北星学園大学, 経済学部, 教授 (70190361)
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Keywords | ホールドアップ問題 / 情報の非対称性 / 下請法 / 公正取引委員会 |
Research Abstract |
今年度は、次の2つの仮説について計量分析した。 仮説1:親企業の下請企業への「ホールドアップ問題=支払い条件」は円高時に悪化し、好況期に改善する。仮説2:ホールドアップ問題に係る下請法違反事件は円高(円安)時に多発(減少)し、好況期には減少する。公取委内の取引部のスタッフ数の増加は違反事件の摘発率を高める。一方、下請法運用費用は下請法違反事件の事前予防策等に支出され、違法行為の予測可能性を高めることを目的としているので、この費用は発生事件数を事前に減らすような効果を発揮する。分析期間は1985年から2000年までとした。分析手法はOLSないしMLである。 1:被説明変数。支払い条件:支払期間、長期手形の発行、現金支払割合他。II:説明変数。円/ドル相場=対前年増加率。景気動向:マクロ指標;1人当たりGDP、実質GDP。ミクロ指標;製造業の自己資本経常利益率、製造業の海外生産比率(空洞化率)=現地法入(製造業)売上高/国内法人(製造業)売上高×100等。下請法の運用指標として、公取委の審査能力を用いた。公取委の審査能力:取引部スタッフ数/公取委総スタッフ数×100,下請法運用予算;下請代金支払遅延等防止法施行経費/公取委総予算額×100。ただし、公取委内での下請課スタッフ数のデータは取引部のスタッフ数を代理変数として採用した。公取委の審査能力変数を含まない仮説1と含む仮説2との分析結果を比較することによって、法運用が下請企業のおかれた状況をどの程度緩和したのかを評価した。審査能力変数を含むことによって支払遅延事件の摘発が促進され、マクロでみた好況期にも支払期間は短くなる可能性があり、法運用は下請企業のおかれた状況を緩和していた。また、審査能力変数を含めると、支払い期間が短縮し、長期手形の発行事件が抑制され、法運用は下請企業のおかれた状況を緩和していた。
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