2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本が締結する自由貿易協定の相手国の最適な順番、締結時期及び形態についての研究
Project/Area Number |
16530190
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
阿部 一知 東京電機大学, 工学部, 教授 (60339067)
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Keywords | 自由貿易協定 / 一般均衡モデル |
Research Abstract |
国際一般均衡モデルの応用により、日本が将来締結するであろう自由貿易協定の相手国と関税撤廃除外品目について、アジア諸国の政策担当者からの情報も交えて、数ケースのシミュレーションを行った。その結果、関税率の低下が大きな正の効果を自国にもたらすという、一般的な貿易理論で得られる結果に加えて、以下の3点の、やや新しい視点の研究成果が得られた。 (1)日本の農業を除外した場合には、相手国の経済便益は大きく縮小するが、日本自体の便益の減少は限定的である、(2)日本の農業を開放する場合であっても、相手国が韓国や中国など、農業に比較優位が小さい国に限定される場合には、貿易転換効果が大きく働き、世界全体及び日本に対する経済便益の上昇は小さい、(3)現在のように日本がASEANに対して自由貿易を先行的に進める場合には、日本は除外品目の範囲を極力狭めないと、後に中国・韓国との自由貿易協定を締結しても、全体としてのアジア大の自由貿易圏の効果は限定的になってしまう。 以上の成果をもとにした政策的な含意として、日本は農業をできる限り幅広く含めた自由化を行うべき、自由貿易協定の締結をできる限り速めて相手国を増やすことにより、相手国が限定された状況を短期化すべき、政策的な目標としてのアジア大の自由貿易圏の効果を最大にするため、日本は除外品目を当初から最小化すべき、という結論が得られた。 また、今後の研究課題として、一般均衡モデルの本格的な動学化(経過的な産業調整をシミュレーションする)、自由貿易協定に伴う原産地規則のモデルへの組み込み(付加価値連鎖を何らかの形で取り入れる)、などの諸点が明らかとなった。
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