2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530217
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
堀内 昭義 中央大学, 総合政策学部, 教授 (00018029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
隋 清遠 横浜市立大学, 商学部, 助教授 (80244408)
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Keywords | 銀行貸出 / 機関銀行 / 銀行の健全性 / 金融自由化 / 企業統治 / 銀行破綻 / 金融行政 |
Research Abstract |
17年度の研究は2年間に亘る研究のとりまとめとして、主として次の二つの研究に取り組んだ。 (1)銀行機能を経済発展の初期過程における工業化との関係でとらえるために、銀行経営と産業経営の関連を歴史的に研究した。研究の対象は20世紀初頭の日本であり、そこで幅広く観察された「機関銀行」、すなわち銀行と融資対象となる産業の密接な関係である。通説によれば、銀行と産業の密接な人的関係や資本的関係は、銀行の経営を脆弱にし、その結果、不安定な金融システムがもたらされた。しかし、われわれの研究によれば、そのような表面的には脆弱な銀行経営にもかかわらず、かなり急速な工業化の進展を妨げることはなかった。これは少々不可思議な現象であるが、この現象を銀行の要求払い債務の発行機能に着目することによって説明するというのがわれわれの仮説である。暫定的な実証分析は、この仮説を支持している。 (2)銀行融資中心の金融システムにおける企業統治(コーポレート・ガバナンス)のメカニズムを、日本政策投資銀行企業財務データバンクから抽出された統計に基づいて実証研究を進めた。とくに1980年代の金融自由化の進展と、企業と銀行との融資取引関係をベースとする企業統治の有効性の変容との関係に焦点をあてて分析した結果、金融自由化が企業統治メカニズムに及ぼした影響はほとんどないこと、銀行との取引関係が企業の経営効率性に及ぼす影響は、1980年以前の時期にも、その後の時期におけると同様に、有意でなかったという結論が得られた。このようなやや「意外な」結果が得られた原因は、高度成長期にも、また金融自由化が進められた時期にも、金融システムにおける競争が必ずしも有効でなかったためと考えられる。金融における競争と銀行や金融機関の経営行動に関する詳細な研究は、今後の研究課題として重要であると考えられる。
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Research Products
(4 results)