2004 Fiscal Year Annual Research Report
韓国雇用慣行の史的展開に関する実証的研究-生活保障主義の圧力と労務管理
Project/Area Number |
16530221
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
金 鎔基 小樽商科大学, 商学部, 教授 (90281873)
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Keywords | 生活保障型処遇制度 / 韓国の雇用・人事制度 / 韓国の雇用・労働史 / 韓国の労使関係 / 鉄道業 / 企業内身分上昇 / 年功賃金 / 企業福祉 |
Research Abstract |
日本の場合、年功賃金や広い意味での企業内福祉など生活保障型処遇制度は、細部において多様な形態をとるとはいえ、戦後のいわば日本的雇用慣行の大枠をなす要素である。日本近代のはじめ、この制度はわずかのホワイトカラー層を対象に作られたが、経済・社会的地位上昇を求める労働者側からの圧力が主に企業内の身分上昇に向けられてきたという日本的事情と、経営側がその圧力や諸環境に対応しつつ労働力の内部化政策を発展させてきたことにより戦後は大衆的制度として確立された。企業内身分上昇圧力は韓国の雇用制度史を描くときも重要な変数であり、その起源は近代的雇用関係の本格的形成が始まった植民地期につながる。日本人を基幹労働力、朝鮮人を周辺労働力とする植民地的雇用政策や朝鮮人の学歴上昇の遅れなどにより、朝鮮人労働者の身分上昇は日本に比べて相対的に立ち後れていたが、解放後、日本人の引き上げによる上位職の空白をうめるため、大量昇進が一挙に実現し、生活保障型処遇制度の裾野も一挙に広げられる。日本の戦後民主化に比べれば、解放から朝鮮戦争にいたる激動期の韓国は、挫折された革命、労使関係の抑圧的再編などで特徴づけられる。しかしマクロレベルにおける抑圧的状況のうらに、社会インフラ部門を中心とする公共部門の職場レベルでは、労働者の身分上昇欲求を汲み取りつつ戦後型雇用慣行が形成されたのである。ただしその慣行を支えるべき理念の未成熟さや担い手たる労働運動の弱さ、そして何より、経済合理性との本格的すり合わせを欠いたという点で、制度としてははなはだ不安定なものであった。後の経済開発期に生活保障型処遇制度が大きく後退するのもそうした弱さの反映であった。以上、鉄道業の事例に即して進められた平成16年度の研究の中間的まとめである。
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Research Products
(2 results)