2005 Fiscal Year Annual Research Report
裁判集会文書に見るカロリング期イタリア北部の森をめぐる経済的諸関係
Project/Area Number |
16530230
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
城戸 照子 大分大学, 経済学部, 助教授 (10212169)
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Keywords | silva stalaria / ベレンガリウス / ヴェネト地方 / 松材 |
Research Abstract |
平成17年度の研究実績として、次の5点が明らかになった。 1 果樹の他、河岸地帯の放牧用の灌木と並んで、個人が燃料を切り出す森silva stalariaが、農地営との関連で重要である。木炭製造については、森林をめぐる係争史料だけでは不明である。 2 Manaresiの刊行による中世初期のイタリア北部の裁判集会文書は、ヨーロッパの他地域に比べ、例外的に多数伝来しているが、それでも一定の地理的・年代的な限界がある。 (1)ポー河河口近隣の沿海地帯は松(燃料用)が多いが、この沿海地帯に関わる文書は少なく、こうした植生を反映した係争などが、確認されない。 (2)Manaresiの史料刊行では、962年以降の政治状況を反映して、裁判集会文書数は激減した。オットー朝ドイツ権力の到来と裁判制度再編により、イタリア北部は裁判集会の伝統を失うこととなった。裁判集会とその文書形式自体カロリング朝的であり、その係争にはカロリング朝的な領主=農民関係が反映されていると言える。 3 裁判集会文書は、所領明細帳の他、カロリング勢力瓦解後にポー河東部ヴェネトを拠点として勢力を伸張した、ベレンガリウス王の商業史料で補完される。また、ヴェネツィア初期商業研究に、木材商業に関する示唆がある。 4 同じ係争が複数回取り上げられる裁判集会から、森に依拠した経済活動の重要性と、農村共同体の森に関わる権利意識の強さが確認される。 5 一方の係争当事者である修道院側の、所領経営に占める森の重要性が確認される。
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