2005 Fiscal Year Annual Research Report
新興経済圏(エマージングエコノミー)の会計システム選択についての研究
Project/Area Number |
16530295
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小津 稚加子 九州大学, 経済学研究院, 助教授 (30214167)
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Keywords | 新興経済圏 / IASB / 会計基準の統合化 / 会計基準の受容 |
Research Abstract |
1998年以降IASCの基準開発は米国会計基準との調和化を加速させた。一方IASB構成国の大部分は相対的に小規模な資本市場しかもたない。本研究では、(1)種々の研究・調査の整理を通じて、先行研究の到達点を明らかにし、(2)「国際的な」会計基準における会計目的の理解のされ方に注意しつつ、(a)国際会計論におけるアプローチ(1990年頃まで)および調和化から統合化移行期におけるアプローチ(1990年以降)を類型化し、新興経済圏の会計研究の位置付けを行った。その結果、会計実務のサーベイ型研究から実証研究型に移行しつつあること、ならびに、伝統的な「会計基準」研究型、「言語圏」別・「地域経済圏」別研究が多く採用されていることが分かった。 このことは新興経済圏諸国の会計研究が、徐々に成熟した資本市場を前提とした会計制度研究に変化しつつあることを示す。会計システム選択の視点からは、新興経済圏諸国が自国で会計基準設計をできないのであれば、先進的な基準設計に成功した諸国ないしは機関から学習(または模倣)を行うのは自然である。同時に、最適な会計基準を模倣(受容)するために制約から解放されるための条件を発掘しなければならない。 Principle-based論に依拠した会計基準設計はIAS/IFRS受容の論理を正当化する考え方となるであろう。Principle-basedの原義からすれば詳細な会計規則を作成しないか、他の会計機関に設定を委ねるので、新興経済圏諸国の会計「原則」が論証されれば、現下の新興経済圏諸国のIAS/IFRS受容行動を、矛盾なく説明できるようになるかもしれないからである。なお、研究成果の一部は、日本会計研究学会第76回九州・沖縄部会(2005年8月6日、九州産業大学)において「新興経済圏(エマージングエコノミー)の会計システム選択-アプローチの整理と開題」として口頭報告した。
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