2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530315
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
黒田 英一 宇都宮大学, 地域共同研究センター, 助教授 (50305976)
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Keywords | 集団就職 / 金の卵 / 技能習得 / 中小企業経営者 / 社会階層 / 社会移動 |
Research Abstract |
集団就職世代の技能習得に関して、集団就職世代を対象とした聞き取り調査、および集団就職世代を雇用した経営者を対象とした聞き取り調査等を行い、中間段階ながら次のような成果をとりあえず得ることができた。 (1)昭和20、30年代に集団就職で上京し、工場や商店に住み込みで働いたいわゆる集団就職世代のなかで、厳しい修期間を経て現在工場経営者や商店主になった者は数が少なく、いわば「一国一城の主」になれた事例は少なかった。 (2)厳しい修行のなかで技能を磨いて技能を身に着けたものだけが、わずかではあるが現在工場経営者や商店主の地位にのぼりつめており、地域のなかでも現在優秀な企業となっている事例も見られる。他の多くの者はすぐに職場をやめ、単純労働者になり、結局は技能形成ができなかったといえる。 (3)この分かれめとなったのは、厳しい修行期間中にいい経営者、いい上司に恵まれたかにかかっているといえる。たまたま、運のいい経営者と出会い、夜間学校にも通学することができ、他にはない技能をも身に着けて、修行期間ののち「暖簾わけ」で独立の夢を果たすことができた事例がみられた。 (4)集団就職世代の聞き取り調査から、集団就職世代の多くが、厳しい修行を経て技能を形成することで、現在では工場経営者や商店主に社会階層が最終的に上昇したとはいえず、社会移動の壁の存在がうかがわれる。 以上の成果を踏まえて、これまでの聞き取り調査では対象サンプルが少かったことから、17年度は集団就職世代の聞き取り調査をさらに継続するとともに、なぜ集団就職がひろく行われるようになったのか、その背景と要因を探ることで、社会階層の世代間移動の実態をさらに深く解明していく予定である。
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