2005 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病者の自助グループ活動及び支援活動に関する比較研究
Project/Area Number |
16530329
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
石倉 康次 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (40253033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
訓覇 法子 日本福祉大学, 福祉経営学部, 教授 (10329766)
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Keywords | 認知症 / 若年認知症 / 自助活動 |
Research Abstract |
平成16年度では、オーストラリアのクリスティーン・ブライデン女史の活動とそれをささえる条件について調査し、本人の著書の出版と日本での講演活動の支援、日本の認知症患者のグループホームでの自治会活動についての調査を実施した。17年度は、(1)カナダでの認知症の当事者主体の活動の調査と、(2)クリスティーンの活動に刺激を受けてひろがりつつある日本での認知症当事者を主体とした活動の特徴を調査するとともに、(3)グループホームの自治会活動を支えるグループホームでの日常の職員の労働を記録する業務調査を実施した。(4)台湾とスウェーデンでの認知症の人の自助活動については調査の企画を練る段階にとどまった。以下、内容について概要を記す。 (1)カナダのトロントで開かれたアルツハイマー協会とDASNIとウオータールー大学との共催による第2回とMAREP全国交流集会に参加した。この大会は、当事者中心の運営による、本人と家族の交流会であり、当事者にとって必要な情報の交流も行われた。この大会での当事者による報告原稿4本を翻訳した。元教師、研究者など知的活動にかつて取り組んでいた人が、認知症とどのようにつきあってきたかが体験に基づいた報告は貴重なものである。 (2)日本での当事者支援の新しい試みとして注目される、長崎の菅崎クリニックの医師とデイケアスタッフで支える本人(もと児童相談所の職員)の講演活動、滋賀県守山市の藤本クリニックでの若年認知症の人の居場所をつくる物忘れカフェの取り組み、一般医を対象とした認知症についての理解を深める活動を視察・調査した。大阪で月1回定期的に開催されている若年認知症のひとを対象とした交流会に参加し、本人の状態を観察するとともに、家族インタビューを試みた。 (3)グループホームの入居者による自治会活動を支援することに象徴されるように、本人の意志や希望を尊重したケアを徹底して追求しているホームの、職員の労働内容・本人とのコミュニケーションの取り方、時々の判断、決して人員体制が潤沢とはいえない職員体制で、どのような連携が行われているのか、客観的に明確にするために1日の具体的な業務内容を記録する調査を実施した。この調査にあたっては、ボイスレコーダーとビデオカメラを活用した。 (4)台湾でも認知症の人に対する支援活動が始まっていること、スウェーデンでも若年認知症の人の支援活動が独自に取り組まれていることが判明した。これらの国での支援活動の詳しい調査は平成18年度に実施することとした。 (1)〜(3)の調査結果によれば、国ごとの家族構成の特徴・自由主義的意識や権利意識・宗教的背景・年金制度の成熟・施設ケアの質の問題等が自助活動に影響していると思われる。18年度は、これらの点について意識した調査・分析を継続する。専門家を対象とした調査報告は行っているが、論文としての公表は18年度に予定している。
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