2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530354
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
高橋 伸一 佛教大学, 社会学部, 教授 (80154821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 良和 愛媛大学, 農学部, 教授 (10201146)
吉田 秀和 龍谷大学, 社会学部, 講師 (10298739)
石橋 通江 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 講師 (30369087)
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Keywords | 社会移動 / 生活ネットワーク / 地域リーダー / 生活史 / 地域再生 |
Research Abstract |
本年度は、当該研究の最終年度であり、過去2年間のヒヤリングの補足調査を実施し研究成果のまとめを行なった。調査過程で、研究対象地域の町村合併(06年2月)が行なわれ、人口3万1296人(07年2月末)の宮若市となった。合併により、名実ともに炭鉱都市からの再生が期待される。一方、合併直後から、次の合併への論争も実在し、隣接する市町との「綱引き」問題として浮上しつつある。 炭鉱の閉山後、街の復活をかけた工場団地の整備事業、難航の末に実現した企業誘致(トヨタ自動車九州)が軌道に乗り、05年にはトヨタ自動車九州は生産体制の拡充と関連企業の進出という新たな情況が展開しつつある。このことは、当該地域の経済的発展とその方向に大きな影響をもたらす。 収集した生活史データは、地域の変遷過程とその要因について、個人の側からアプローチを試みるものであった。旧炭鉱会社の更生事業を最後まで担った人物の生活史とパーソナルネットワークを丹念に記録することで、炭鉱会社の地域での役割、閉山による地域経済への影響などを通史的に考察することができた。企業都市の問題点と地域行政の課題を明らかにすることができた。 また、戦後に当該地域に移り住み、一旦は関西に転出した後に、Uターンして地域の民生活動を担った人物の生活史では、福祉行政への住民参加の事例として優れたモデルを提示できた。特に、住宅政策を地域福祉の土台に設定し、行政と一体となって民生事業を推し進めるいたった個人のネットワークの特質、キャリア分析から得られた知見は重要である。 当該地域は、合併効果の推移やトヨタ自動車・関連企業の進出など諸課題はあるものの、石炭産業の衰退による諸困難を乗り越え地域の再生の途を歩み始めている。地域住民を主体とした地域運営の行くすえとそこに展開される「生活ネットワーク」の機能を今後も注目したい。
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