2004 Fiscal Year Annual Research Report
福祉契約における保護と自律のあり方に関する制度・政策的研究
Project/Area Number |
16530377
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
秋元 美世 東洋大学, 社会学部, 教授 (00175803)
|
Keywords | 自己決定 / パターナリズム / ソフト・ロー / 福祉契約 |
Research Abstract |
本年度(平成16年度)は、第1に、国際法の分野で論じられている「ソフト・ロー」と「ハード・ロー」という枠組みの中で、福祉契約の問題を位置づけることが可能なのか、また可能だとしてそれが適切なのかということについて検討を加えた。ソフト・ローとは、国の法律ではなく、最終的に裁判所による強制的実行が保証されていないにもかかわらず、現実の社会において行政や企業、市民などが何らかの拘束感を持ちながら従っている規範のことである(これに対して、国の法律など、強行性のある実定法規をハード・ローと呼んでいる)。ソフト・ローの概念は、現在では、企業法や労働法の分野の問題を取り扱う際に、有用な理論枠組みと認識されつつあるが、社会保障や福祉の場面でも、その発想や知見を参考にできる部分が多々あることがわかった。例えば、福祉契約を権利実現の1つの手段・方法として見た場合、それで実現する権利の内容について、ハード・ロー的な観点からではなく、ソフト・ロー的な観点から位置づけるならば、福祉の現実に即した柔軟な法律関係や権利関係の構成が可能となるということも考えられる。 次に、保護と自律の関係をめぐっては、次のような考察結果がえられた。すなわち、支援と自律は、排他的な関係にあるのではなく、支援を受けながらの自己決定(=支援された自律)ということは、規範論の立場からも正当化しうるものである。ただしその際、留意しなければならないことがある。1つは、ドゥオーキンが言うところの「手続的独立性」ということが侵され、「決定の収奪」が起きないように努めることである。いま1つは、「支援された自律」と「保護」(代行決定)のつながりについてである。状況の変化によっては、支援された自律から保護への転換が必要となる場合もある。この点で、近年注目されているも「支援された決定モデル」は、有用な役割を果たすと考えられる。
|
Research Products
(3 results)