2004 Fiscal Year Annual Research Report
大学生の政治不信形成に及ぼす政治的関心,態度および個人差要因の影響
Project/Area Number |
16530400
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
原田 唯司 静岡大学, 教育学部, 教授 (10156507)
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Keywords | 政治不信 / 政治的自己効力感 / 政治的関心 / 政治との主観的距離感 / 大学生 |
Research Abstract |
本研究は,政治不信が形成される過程で,政治的関心や態度,さらには政治的自己効力感や無力感のような個人内変数がどのように関与しているのかを大学生を対象として明らかにすることを目的としている.本年度においては,まず,個人差要因の一つとして注目される政治的自己効力感について概念整理を行うとともに,政治的自己効力感の測定尺度の作成を目的として調査Iを実施した.その結果,政治的自己効力感は"判断力"や"知識","正当性"など自らが政治的見解を持つことに関わる自信や肯定感という内的な側面と,一般的政治的有効性感覚に代表される市民として政治過程に影響を与えることができるという信念という側面から構成されていることが明らかにされた.作成された政治的自己効力感尺度は政治的関心と正の,政治に対する主観的距離感とは負のそれぞれ有意な相関を示し,信頼性・妥当性ともに十分な値が得られた. さらに,本年度においては,大学生の政治不信感情の構造と実態及び政治不信形成の過程に影響を及ぼす要因の効果について検討するために調査IIを実施した.その結果,大学生の政治不信は"担い手の役割期待違反"と"政治過程の不透明感"の2因子から構成されることがあらためて確認されるとともに,これら政治不信の質的相違に応じて関連要因の効果の方向性と大きさが異なることが示唆された.すなわち,政治的自己効力感は"政治過程の不透明感"のみに有意な正の効果を持つ一方で,一般的政治的有効感の欠如と政治との主観的距離感は"担い手の役割期待違反"にのみ正の有意な効果を示していた.また,政治的無力感は政治不信のどちらの因子にも正の有意な効果を持っていた.以上から,無力感の大きさが大学生の政治不信をより包括的・直接的に説明していること,政治不信は質的に相違する2つの側面に区別可能であること,さらに,それぞれの政治不信の形成には政治的自己効力感など個人差を説明する要因が独自に機能している可能性があることなどが明らかにされた.
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Research Products
(2 results)