2005 Fiscal Year Annual Research Report
大学生の政治不信形成に及ぼす政治的関心,態度および個人差要因の影響
Project/Area Number |
16530400
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
原田 唯司 静岡大学, 教育学部, 教授 (10156507)
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Keywords | 政治不信 / 政治的自己効力感 / 認知的閉鎖欲求 / 政治的関心 / 政治的態度 / 大学生 |
Research Abstract |
本研究は,政治不信が形成される過程で,政治的関心や態度,さらには政治的自己効力感のような個人内変数がどのように関与しているのかを大学生を対象として明らかにすることを目的としている.本年度においては,まず第1に,昨年度開発された政治的自己効力感尺度の改訂版を作成することを目的として調査Iを行った.その結果,"内的自己効力感","外的自己効力感"および"個人的有能感"と命名される3つの因子からなる政治的自己効力感尺度が新たに構成され,従来の政治的有効性感覚の構造に関する知見と一貫する要素を持つ測定尺度が開発された. 第2に,個人差変数として新たに認知的閉鎖欲求に注目し,適切な測定尺度を作成するために調査IIを実施した.その結果,"決断性","予測可能性への好み","あいまいさに対する不寛容"および"秩序への好み"と命名される4因子構造からなる認知的閉鎖欲求尺度が開発された.政治的自己効力感との間の相関を求めたところ,"決断性"と"内的自己効力感"との間には正の,"予測可能性への好み"との間には負の相関が見られたことから,認知的閉鎖欲求は質的に異なる2つの側面から構成されることが示唆された. 第3に,個人差変数として政治的自己効力感および認知的閉鎖欲求を取り上げ,さらに政治的関心を加えてこれらの諸変数と政治不信との間の関連性を明らかにすることを目的として,大学生を対象とする調査IIIを行った.その結果,政治的関心はいずれの政治不信の要素に対しても有意な相関を示さなかったこと,政治不信のうちで"情報占有・隠蔽"に対しては認知的閉鎖欲求の"決断性"が正の,"予測可能性への好み"が負の有意な相関を示したこと,政治的自己効力感のうちで内的有効感は"情報占有・隠蔽"に起因する政治不信に正の相関を示し,外的有効感の低さが多くの政治不信要素と正の相関を持つことなどが明らかにされた. 以上から,政治不信の構成要素の相違に応じて認知的閉鎖欲求や政治的自己効力感などの個人内要因の効果が異なることが示唆され,大学生段階における政治不信は自己効力感や認知的特性の相違に応じて異なる様式で出現することが示唆された.
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Research Products
(3 results)