2005 Fiscal Year Annual Research Report
社会化された注意-比較文化的および発達的視点からの検証-
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16530408
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
唐澤 真弓 東京女子大学, 現代文化学部, 教授 (60255940)
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Keywords | 注意方略 / 社会化・文化化 / 文化間差 / 文化内差 / FLT課題 |
Research Abstract |
本研究は、認知、特に注意の社会化・文化化に着目し、発達・文化間比較的実証研究を行い、文化と心の変化と一貫性、継続性と非継続性、多様性と普遍性について、検討することである。本研究で取り上げる注意方略とは、注意の焦点化方略と注意の分散化方略である。「注意の焦点化方略」とは、分析的知覚と対応し、周囲に存在する刺激の中でも最も注意を引くもの(対象)に注目し、そこから得た手がかりをもとにして仮説演繹的に対象の心的表象を構築するプロセスをいう。そこでは対象以外の刺激(コンテクスト)はしばしば無視される。この傾向は、特に欧米において優位であると仮定される。これに対して、「注意の分散化方略」とは、包括的知覚と対応し、対象とともにコンテクストにも広く注意を向け、様々な手がかりを両者からサンプルし、それらの全体的布置と最もよく合致する心的表象を記憶から検索するプロセスをいう。この傾向は、特に東洋において優位であると仮定される。この注意の社会化過程について、「文化的な注意方略は、発達の早期、だいたい4-6歳頃に、異なった社会化過程を通して獲得される」こと、また「いったん獲得されたこの注意方略は、極めて安定性の高いものであり、変化しにくいものである」という仮説を検証することを目的としていたが、実験を進めるうちに、文化内差、文化間差を検討する必要が発生した。そこで、今年度は、文化内・文化間のデータを中心に収集した。 今年度は,昨年度の成果を踏まえ、研究1-4までを再検討し、下記の研究を行った。 研究1.線・枠課題(FLT課題)を質問紙上で開発に際し、実験刺激の微妙な枠組みによって結果が不安定であることがわかった。刺激の再検討を行い、最終版を完成した。これを日本、アメリカ、さらに共同研究への参加者の増加により、ドイツ、韓国の大学生と日本人中学生を対象に実施し、注意方略の文化間の変動と文化内の変動を検討した。また、これらに関わる要因をみるために、思いやり、自尊心尺度を同時に実施し、認知的課題との整合性を検討した。 研究2:幼児から小学生と成人とに遂行可能なFLT課題の開発を試みた。さらに、来年度のデータ収集に向けての予備調査、協力者の可能性を検討中である。 研究3:質問紙に関しては、最終的にFLT課題に加え、原因帰属、信頼感尺度、集団主義・個人主義尺度、自己-他者関連尺度を加え、注意方略と内的要因と関係を検討するための質問紙を実施した。 アメリカ、ドイツのデータを収集し終え、現在分析中である。
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Research Products
(1 results)