2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530421
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山形 恭子 金沢大学, 法学部, 教授 (20085963)
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Keywords | シンボル / 表記知識 / 年少幼児 / 発達過程 / 絵本知識 / 産出活動 / 描画・絵 / 文字 |
Research Abstract |
本研究では年少幼児を対象として描画(絵)・文字表記領域に焦点を当てて、産出課題・絵本課題・分類課題・読字数テスト(ひらがな文字と数字)を使用して表記知識・表記活動の発生過程を分析した。産出課題では果物・人物の対になった対象(トマト・みかんならびに親・赤ん坊)の描画と書字を求め、その表記知識と産出活動を調べた。絵本課題ではClayの「プリント概念テスト」を年少幼児向けに改変した課題を考案して「絵本知識テスト」を作成し、絵本読解と表記知識に関する質問項目を尋ねた。 結果は産出課題で発達早期に描画に関して対象の形・色・大小の知識が見られ、また、文字に関しても線描に方向性・分節・単位のいわゆる擬文字が認められ、年少幼児がすでに知覚的・形式的知識を理解していることが示された。しかし、描画と文字を比較すると、これらの表記知識は描画で年齢に伴う増加が見られたのに対して、上記の文字の書字では人数の10%程度しか認められず、年齢に伴う増加も見出されなかった。ただし、名前の書字では30〜40%が擬文字を示し、その割合は高かった。これらの結果から表記知識は描画や文字が成立する以前にすでに領域固有な知識として理解されており、また、文字に比べて描画で発達的に早期に理解されると共に産出活動にも影響を与えることが判明した。 絵本知識テストでは年齢に伴って得点の増加が見られて絵本理解が進展したが、しかし、それは描画(絵)と関連しており、文字に関する質問項目とは関連がなかった。絵本知識テストと描画産出課題の間に傾向による相関が得られたが、文字産出課題との間では有意な相関が見出されなかった。年少幼児では絵本知識テストにおいて文字に関連した項目は理解されていないが、描画・絵に関連する項目は理解され、それらの描画・絵を通じて意味理解も可能であることが判明した。また、分類課題では描画・文字・数字に関するカードを用意して、この3種のシンボル・表記に分類することを要求したが、これらの3種の分類に年齢に伴う大きな差異は見られなかった。 以上から、年少幼児はすでに領域固有の知覚的・形式的表記知識をもっており、描画は文字よりも表記知識ならびに産出活動において早期に発達することが明らかにされた。なお、家庭におけるインフォーマルな教授の実態調査に関しては現在調査・処理中である。
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Research Products
(5 results)