2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16530421
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山形 恭子 金沢大学, 法学部, 教授 (20085963)
|
Keywords | 表記知識 / 表記活動 / 初期発達 / 絵本 / 書字・読字 / 分類課題 / 算出課題と理解課題 / インフォーマルな教授 |
Research Abstract |
平成18年度は表記活動・表記知識の初期発達とその規定要因を解明するために、これまで実施してきた表記産出課題・絵本課題・選択分類課題・書字・読字課題に関する研究の詳細な分析をおこない、(1)発達初期におけるシンボル・表記活動の発達的特徴、(2)課題間の関連性、(3)家庭におけるインフォーマルな表記活動の実態を明らかにし、平成16年〜18年度の研究総括をおこなった。その結果、以下に示す研究成果がえられた。 1.4歳児以下の年少児を対象に産出課題を用いて描画と文字に関する表記知識を検討したところ、2.5歳ですでにシンボル・表記活動間の区別や領域固有な知識が見出され、それらが年齢にともなって増加することが示された。これらの結果は発達早期にすでに領域固有な知識が理解されていることを示唆しているものの、描画が文字よりも産出活動で発達的に先行し、描画と書字課題間の関連が認められたことから、領域固有説に加えて領域普遍なシンボル機能の発達も考慮する必要性を指摘した。 2.絵本課題では絵本に関する手続き的知識・文字読みの手続き的知識・文字表記知識・意味内容(ストーリー)理解の4側面に関して年少児と年長児を対象に検討し、これらと読字・書字課題との関連性を吟味した。結果は絵本課題の4側面に関して3つの異なる発達位相が見出された。すなわち、2歳代に意味内容・絵本に関する手続き的知識がすでに理解されていたが、文字読みの手続き的知識・文字表記知識の理解に関しては年齢にともなって増加することが見られた。しかし、文字読みにおける手続き的知識中の読みの始点に関する知識に関しては年少児で年齢差がなかったが、年長児では年齢にともなう増加が見られた。課題間の関連性に関しては文字読みの手続き的知識と文字表記知識の理解が読字・書字課題と強く相関し、絵本読みとの関連が示された。 3.選択分類課題では表記知識の形式的・知覚的特徴・要素的特徴・綴りの特徴に関する3種の特徴を取り上げて、読字・書字課題との関連を検討した。その結果、形式的知覚的特徴が最も早期に成立したが、要素的特徴は年齢の増加にともなって発達した。しかし、綴りの特徴は6歳でも理解されず、表記知識の発達に3段階が認められた。また、選択分類課題と読字・書字課題との関連性は全体として見出せなかったが、3種類の特徴毎の分析では年齢によって違いが見られ、5歳で読字と要素的特徴が、4歳と6歳で読字と綴りの特徴が関連した。各年齢段階で理解可能な表記知識の特徴が異なることが示された。 4.課題間の分析では形式的知覚的表記知識が2歳後半に認められたが、要素的表記知識や読字・書字は年齢にともなって発達し、絵本課題との相関から絵本がその発達を規定する一要因であることが実証された。 5.インフォーマルな家庭での実態では発達早期から文字・絵本読みなどに関する活動が積極的におこなわれていることが示された。本調査ではこうした家庭における表記活動・絵本活動と子どもの表記活動・表記知識との関連性を明らかにできなかったが、今後、この両者の関係を解明することが求められる。 本研究では表記活動・表記知識の初期発達に焦点を当て、その規定要因として絵本課題・書字・読字課題を取り上げて検討したが、課題の種類で異なるものの、4歳以上で理解課題では表記知識と書字・読字との関連が示された。また、2歳では絵本課題が間接的に表記知識と関連することが判明した。これらの規定要因間の関連性を今後詳細に解明する必要がある。
|
Research Products
(4 results)