2004 Fiscal Year Annual Research Report
外傷記憶に対するEMDRの治療効果の比較-外傷記憶が短期記憶か長期記憶かの差-
Project/Area Number |
16530461
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
志和 資朗 広島修道大学, 人文学部, 教授 (20351984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 俊 広島修道大学, 人文学部, 教授 (50173844)
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Keywords | EMDR / 脱感作 / 外傷記憶 / SUDS / ERP / P3 |
Research Abstract |
EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)は、1987年にShapiroによって発見された心理療法である。クライエントは、外傷記憶を想起しながら、治療者が眼前で左右に動かす指を追うように目を左右に動かす。この手続きのくり返しで外傷記憶に関する不安が急速に消失する。EMDRの治療効果は口頭報告による主観的な評価が用いられることが多く、客観的な評価が必要である。 本研究では、外傷刺激が呈示された時の事象関連脳電位(ERP)を測定する。ERPのなかでも、認知情報処理の過程を直接反映すると考えられているP3の振幅や潜時が、EMDRの前後でどのように変化するのかを検討する。また、治療の対象となる外傷記憶が短期記憶か長期記憶かによって、EMDRの治療効果が異なるのかを明らかにする。 そこで、まず本研究ではEMDRによって不快な記憶が脱感作されるかを精神生理学的な指標であるP3を用いて検討した。被験者は41名の大学生である。まず、重度に不快な記憶を持つ被験者を3群に割り当てた。EMDR群では不快な記憶を想起しながら眼球運動を行い、Image群では視覚刺激を凝視しながら不快な記憶の想起を行い、EM群では眼球運動のみ行った。また、軽度に不快な記憶を持つ被験者を低SUDS(主観的障害尺度)群に割り当て、軽度に不快な記憶を想起しながら眼球運動を行わせた。本実験では、不快な記憶に関連する人物の姓(関連刺激)を刺激に用いて脳波の測定を行い、関連刺激に対して生起したP3の振幅を、眼球運動あるいは視覚刺激を凝視した前後で比較した。その結果、EMDR群のP3振幅が有意に低下していた。また、SUDSの値はEMDR群と低SUDS群で低下した。この結果は、EMDRの有効性を示すものといえる。
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Research Products
(1 results)