Research Abstract |
本研究の目的はヒトと霊長類の内因性(自発性)瞬目の比較研究をすることである.ヒトのデータは既にある程度の量は蓄積したので,今回は代表的な霊長類の瞬目をビデオ記録をした.記録をしたのはニホンモンキーセンターで、そこにいる83種の霊長類について全く動きの制限のない自由場面での記録をした.記録をはじめたのは数年前からで、最終的に記録が整った時は75種に限定された.データ解析はひたすらビデオの手動による解析である.その結果,途中経過ではあるが,一定量の結果が出た.従属変数は,1)瞬目率,2)頭部運動との同期の程度,つまり水平垂直の頭部運動に連動するかあるいは独立にしたかを見る、そして3)瞬目の時間,である.瞬目時間は瞬目のあった時点で止め,そこから瞬目の開始と終了をコマ送りで解析し、そのフレーム数を数えた. 上記の3つの従属変数ごとに,1)系統差,2)活動リズム,3)生息条件,3)体重,4)身長,などと関連を検討した.その結果,ヒトとの比較でいえば,瞬目率はヒトの半分から1/3程度の頻度であること,瞬目時間はヒトの約半分の時間であること,などが特徴として浮かび上がり,さらに霊長類内での比較では,1)科水準での系統差(6水準)は有意差があって,進化によって瞬目率は増加する傾向を示唆した,2)中でも、強い影響のあった変数は活動リズムで,夜行性と昼行性の間に顕著な差が見られ,夜行性の種(5種)は有意に昼行性の種よりも瞬目率は低下する,3)と4)の身体サイズもまたある程度の相関が見られ,身体サイズの増加と瞬目率は相関が見られた.さらに,頭部運動との連動も系統差がはっきり観察できた.その他に,今後さらに詳細な検討がなされなければならない条件として,移動方式(Locomotion),身体運動の速度と頻度,眼球・眼瞼条件,などが残された.途中経過は昨年の霊長類学会で報告した.
|