2006 Fiscal Year Annual Research Report
地方分権化による都道府県教育行政構造の変動に関する実証的研究
Project/Area Number |
16530487
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
横井 敏郎 北海道大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (40250401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪井 由美 北海道大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (50115664)
光本 滋 北海道大学, 大学院・教育学研究科, 助手 (10333585)
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Keywords | 教育委員会 / 知事部局 / 自治体教育行政 / 地方分権 / 高校再編 / 包括的子ども行政 |
Research Abstract |
1.本年度も引き続き、長野県を対象に調査を実施した。改革派の無党派知事が選挙で落運した後に調査に入ったが、県教育行政に関して大きな変化はなかった。昨年度までは知事部局、県教育委員会、教職員組合、大学等の主要組織に訪問したが、今回は県下の小規模町村地域を中心に調査を実施した。 2.県南部の下伊那地域の小規模町村は、県と「市町村自律プラン」を作成し、県の支援を得ながら、自治体連携も図って自立しようとしているが、調査では、教育行政における自治体連携は容易ではなく、県の支援も複数の市町村の意向の差異があって十分な効果を発揮できていないことが明らかになった。高校再編をめぐっては、これらの町村は小規模高校の存続に取り組み、県と対立することとなったが、結果的には小規模校は多くが存続し、必ずしも厳しい前知事批判は聞かれなかった。 3.同地域の阿智村では、町教委に子育て支援室が設置されており、同村では村長部局と教育委員会の連携による子育て体制を作ろうとする動きが生まれていた。 4.長野県駒ヶ根市では特区制度を使って、保健行政部門を市長部局から市教育委員会に移した。これを契機に5歳児早期健診の開始、学校への保健師の巡回、子どもの健康を記録するカードの作成などに取り組み、就学前から学齢期にわたって子どもの健康・発達を一貫してフォローする体制を作り上げようとしていた。 5.地方財政削減と少子化のもとで、ローカル・ガバナンスが変化している。県レベルでは知事部局の県教委への影響力が顕著である。市町村レベルでは教委と首長部局が連携した包括的子ども行政の萌芽が生まれていた。また市町村の連携の動きも見られた。その中で生じた教育分野における高校再編問題・小人数学級問題をめぐる県・県教委と議会・市町村・教委との対立は、市町村の自立とまちづくりの展望、厳しい県予算歳出構造のあり方、いわゆる公共事業問題と県経済・産業構造などが絡まる複雑な環境の中で生じた現象であったととらえられる。
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Research Products
(5 results)