2005 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツにおける大学教育学形成にかかわる大学理念論に関する研究
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16530497
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
津田 純子 新潟大学, 大学教育開発研究センター, 教授 (90345520)
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Keywords | ドイツ大学教育学運動 / 大学の理念 / 大学教授法 / FDの体系化と組織化 |
Research Abstract |
1.研究目的 今日のドイツ大学教授法(Hochschuldidaktik)の先駆けとされる大学教育学(Hochschulpadagogik)が、19世紀後半以降の急速な社会の産業化、学問の専門分化と大学の「大衆化」で生じた大学教育の機能不全問題を克服するための改革運動において、どのように構想されていたか、明らかにすることを課題とする。 その際、日本をはじめとする世界の大学制度の基本的な理念であるフンボルト理念が、大学教育学の体系化においてどのように論議されていたか、特に注目する。さらにこの論議が現代のドイツ大学教授法にどのように継承されているか考察することを通して、日本の大学教員文化とFDの体系化と組織化問題を検討する。 2.研究経過、 先行研究者への面談と文献収集調査のため、三回(2004年9月、2005年2月、2006年3月)渡欧し、調査研究の成果は、大学史研究会第27回セミナー、教育史学会第49回大会、ドイツ大学教授法研究協会(AHD)2006年国際大会などで報告した。 3.これまでに得られた重要なテーゼ (1)現在国内外で注目されている成人教育学を基礎理論とするFDの体系化は、ドイツ大学教育学運動の成果、『大学教育学入門』(1907)で既に試行された。(2)大学教育学の体系化は、大学教育改革運動の組織化と「大学教員養成ゼミナール」制度化構想と連動していた。このような戦略が、ドイツでは今日に継承されている。日本のFDの現状打開には今後必要な戦略であろう。(3)大学教育学は、教育学を学校に限定するヘルバルト学派に抗して、フンボルト理念と成人教育学論を特性とする教育学として一般教育学に位置付けられた。(4)大学教育学では、大学教育の社会化機能に着眼し、職業教育論や学生指導論も重要な分野とした。(5)大学教育学の重要な学習理論として、新教育運動下の学習中心の教育改革理論(直観教授法、知覚指導、芸術教育がある。(6)大学教育学は、「学習の自由」の下での放任に歯止めをかけ、学生指導の方法や教育効果を高める講義改善法の開発をねらいとしていた。
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