2004 Fiscal Year Annual Research Report
地方分権下における都道府県教育委員会の教育政策「評価」に関する研究
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16530513
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河野 和清 広島大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (30116579)
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Keywords | 自律的学校経営 / 学校予算編成 / 県教育委員会 / タイムリミット制 / 学校長裁量予算 / 政策評価 |
Research Abstract |
1.本研究は、都道府県教育委員会がどのように教育政策を樹立し、実施し、そして評価し、教育行政機関としての責任を果たそうとしているのか、その教育政策実施の実態(過程)とそこにおける課題を明らかにする。なお、この場合、教育政策として、今日最も注目されている政策課題の一つである「高等学校の自律的学校経営」を取り上げ、学校予算編成の面から見た自律的学校経営の検討を行う。本年度は、2都道府県教育委員会と2公立学校について事例研究を行った。 2.その結果、自律的学校経営から見た場合の学校予算編成の特徴点と課題は、次のように指摘できる。 (1)学校長裁量予算は、各高等学校の中長期計画にそって、独自の学校づくりをするよう求められており、その額もかなり多く、その意味では、各学校が主体的に特色ある学校づくりを行う上で、有益であるように思われる。 (2)高等学校の予算編成に当たっては、各学校が主体的に予算の見積を行う機会とヒアリングの機会が設けられており、各学校の意向が県教委の予算編成に反映される仕組みが一応できているといえる。 (3)学校配当予算は、やはり学校を維持運営するための最低保障の経費という意味合いが強いといえよう。各学校が学校教育活動に肉付けをしたり、特色を出すためには、学校長裁量予算や補助金を獲得する必要がでてくる。 (4)県財政が悪化する中で、資源の一層の有効活用をはかるために、4つの予算枠(重点枠、政策的経費、義務的経費、予算調整責任者枠)の設定、政策のタイムリミット制・政策評価システムの採用、あるいは政策の体系化(重点化)など、さまざまな新しい試みが行われていることは注目される。ここには、県として限られた資源を集中的に配分し、その成果を評価することによって、資源の効果的活用と県民に対する説明責任を果たそうとする意図が窺える。今後、資源の有効活用をはかるためにも、教育(学校)予算編成と政策(事業)評価は一体的に捉えられることになるであろう。その意味では、教育委員会や学校は、ともに、どういうビジョンをもって行政行動や教育活動を展開するのか(事業立案)、そしてその結果をどう評価するのか(事業評価)が厳しく問われることになる。
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