2006 Fiscal Year Annual Research Report
フランスのアニマシオン理念の学校・社会教育への定着過定とアソシアシオンの役割
Project/Area Number |
16530555
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Research Institution | Shigakukan University |
Principal Investigator |
岩橋 恵子 志學館大学, 人間関係学部, 教授 (70248649)
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Keywords | フランス / アニマシオン / アニマトゥール / 学校周辺活動 / 学業失敗 / 学習随伴活動 / アソシアシオン / 社会的労働 |
Research Abstract |
従来アニマシオン活動は、その活動主体としてはアソシアシオン(NPO)、活動内容としては学校教育批判を基調として、学校教育制度とは関係をもたずに展開されてきた。ところが1990年代頃からアニマシオン活動は市町村レベルで担われるようになっており、その活動内容も学校教育との積極的相補関係を築く方向へと大きくシフトしている。本研究はその変化の要因と実態およびその意味の解明をはかった。結論は以下の通りである。 (1)1970年代後半からの深刻な学業失敗(落第の大量発生など)の問題が1980年代には最大の社会問題の一つとして浮上した。そしてそれへの対応を引き受ける活動領域として「学校周辺活動(activites periscolaires)」という学校教育と学校外教育(社会教育)の中間領域が「公役務」を担う活動として認知されていった(1989年教育基本法など)。市町村は地域社会の重要な課題として「学校周辺活動」を引き受けていくことになった。 (2)学校周辺活動は、当初は宿題援助など勉学を中心とした支援に力が注がれ学校教師が関わったが、学業失敗の要因として子どもの社会文化的ハンディキャップの側面に関心が向けられ、直接的な勉学よりはむしろ学業成功に不可欠な文化活動の展開や社会性の形成が重視されるようになる。その活動の受け皿となり大きな影響を与えたのが長年の余暇活動の中で蓄積されてきたアニマシオン活動であった。またそれを担う専門職員としてアニマトゥールが市町村で大量に採用されるようになる。 (3)アニマシオン活動自体も、余暇の文化的組織化のみならず積極的に学業失敗との闘いを自らの役割領域に取り入れるようになる。その結果アニマシオン概念は、「社会問題との闘い」という新しい役割を内包する理念へと広がることになった。 かつてアニマシオン理念のもつ活動中心主義が学業と対立するものとして捉えられていたが、今日では学校教育が失敗したようなことも成功裡に導く可能性を有するものとして再評価が始まっている。「学校周辺活動」という新たな教育活動領域の設定も含め、日本の学力問題に示唆的な動向といえる。
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Research Products
(5 results)