2006 Fiscal Year Annual Research Report
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16540023
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
有木 進 京都大学, 数理解析研究所, 助教授 (40212641)
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Keywords | B型Hecke代数 / 有理Cherednik代数 |
Research Abstract |
本年度前半はB型Hecke代数の研究を中心に行った。B型Hecke代数の場合にもSpecht加群理論がDipper-James-Murphyにより構成されており、既約表現を分類するには、Specht加群上に定義された双線形形式がいつ恒等的にゼロでないかを判定すればよい。研究代表者の以前の研究により、そのためにはHecke代数からあるKac-Moody代数を定め、その基本表現のテンソルクリスタルの最高ウエイト連結成分に属することが必要十分であることが知られていたが、これを具体的に計算しようとすると柏原作用素の組み合わせ論的な言いかえを用いて空なbipartitionから再帰的な計算によって求めるbipartitionを得るしか方法がなかった。今回Littelmannのpath modelを用いてヤング図形の言葉に言い換えることにより、ヤング図形に対する新しい操作、base, tauを定義することに成功し、Kreimanらが昨年定義したroofとあわせて、「(lambda, mu)に付随したSpecht加群上に定義された双線形形式が恒等的にゼロでない」ための必要十分条件が「roof (lambda)がtau (base (mu))に含まれる」であることを証明した。ここで定義された新しい操作は柏原作用素とはまったく違う動きをするupとdownという操作から定義されており、柏原クリスタルの理論では解釈できないものである。この理論によりとくに再帰的でない判定条件が得られたことになり、また一昨年Fayersにより得られたe=3の結果を系として含む。この研究は、Kreiman, Tsuchiokaとの共著「On the tensor product of two basic representations of U_v (hat |sl|_e)」にまとめて、現在投稿中である。さて、上記のDipper-James-Murphyの研究は15年近く前に行われたもので、研究代表者の研究が現れる以前のことであった。この論文の中で彼らは最高ウエイト理論に類似のアイデアに導かれて、彼ら独自の方法論によりSpecht加群上に定義された双線形形式がいつ恒等的にゼロでないかについて判定条件を予想した。その後研究代表者の研究が現れて別の方法論により一応の解決を見たわけであるが、このDipper-James-Murphy予想についてはその成否はわからないままであった。今回得られた結果を元に研究したところ、この10年以上にわたり未解決であった問題を解決することができた。この研究は本年度後半に行い、成果をJaconとの共著「Dipper-James-Murphy's conjecture for Hecke algebras of type B_n」にまとめて、現在投稿中である。 本年度後半にはさらに、Rouquierの研究に刺激されてHecke代数のquasihereditary coverである有理Cherednik代数の表現論について予備的調査を行った。重要関連論文の証明の不備等を発見するとともに証明を変更・整理して名古屋大学において1月に1週間の講義を行った。Cherednik代数の専門家にも有益な講義であったようである。
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Research Products
(2 results)