2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540023
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
有木 進 Kyoto University, 数理解析研究所, 准教授 (40212641)
|
Keywords | Hecke代数 / モジュラー表現 / 柏原クリスタル |
Research Abstract |
7月に国際研究集会Geometry and Lie TheoryやICRT IVで発表し、8月のICRA XIIと9月の中国科学院でそれぞれ3コマずつ講演、また3月にMSRIで発表するなど、最終年度にふさわしく多くの研究成果発表の機会に恵まれた。3コマ講演の発表内容は前年度までの研究成果が中心であり、柏原クリスタルのHecke代数のモジュラー表現への応用などである。とくに、Kreiman, Tsuchiokaとの共著で発見した、Littelmannのpath modelを用いたKleshchev bipartitionの記述は重要であり、本年度に至って12年間未解決だったDipper, James, Murphyの予想を解決でき、Jaconとの共著を発表した。DJM予想とは、B型Hecke代数のSpecht加群理論に基づきいつSpecht加群上の対称双線形形式が消えるか、を問う問題で、各bipartitionごとに基底元の集合と両側イデアルが定まり、いつ2つの基底元の積が常にこの両側イデアルに入るか、という問題になる。彼らはLie代数の最高重み理論に類似の考えを用いて(Q,e)-restricted bipartitionという概念を導入し双線形形式が消えないための必要十分条件を予想した。研究代表者の過去の研究成果によりこの問題を柏原クリスタルとFock空間の問題、すなわちHecke代数での基底元の積とはまったく無関係の問題に置き換えることができる。しかし、この問題を解くためにクリスタル的でない作用素を導入する、というさらにもうひとつ新しいアイデアが必要であった。すなわちLittelmannのpath modelに注目しこれをヤング図形のモデルにしたうえで、LS pathの最初の方向ベクトルと最後の方向ベクトルを組合せ論的に記述するために、upとdownというクリスタル的でない作用素を導入するのである。応用として、上で述べたKleshchev bipartitionの記述を得ることができ、upとdownの性質をフルに用いることにより帰納的にDJM予想が成り立つことを示すことができたのである。 さて、近年Rouquierにより基礎体が複素数体の場合に巡回Hecke代数のquasihereditary coverとして複素鏡映群に付随した有理Cherednik代数の圏Oをとれることが明らかとなった。これはFock空間全体の圏化ともからみ、現在研究者の間で大きな描像が成立しつつある。本年度後半はこの新しい研究方向へ向けての萌芽的研究を行った。
|
Research Products
(8 results)