2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540024
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河合 俊哉 京都大学, 数理解析研究所, 助教授 (20293970)
|
Keywords | カラビ-ヤウ多様体 / 弦双対性 / グロモフ-ウイッテン不変量 / 楕円コホモロジー / ヤコビ形式 / ボーチャーズ積 / F理論 / 混成弦 |
Research Abstract |
ボーチャーズ積とはある種のヤコビ形式を種にしてIV型対称領域の保型形式を積の形で与えるものであった。IV型対称領域ということでK3曲面の幾何(特に数え上げ幾何)との関係が当然予想されて来たが、残念ながら現時点では満足すべき結果は得られていない。しかしながら、より難しいと思われる三次元カラビ-ヤウ多様体に対しては、やはりボーチャーズ積の類似が存在し、それが「層(Dブレーン)の足し上げ」や、(数学的に厳密に定義されている)グロモフ-ウイッテン不変量などの数え上げ幾何と関係することが弦理論から強く示唆される。このようなボーチャーズ積の類似はカラビ-ヤウ多様体を弦理論のコンパクト化に利用したときのBPS状態を記述するある種のゼータ関数の「Euler積」と見なせ、物理的にも重要であると思われる。 本年度の研究は基本的には前年度からの研究の継承であるが、カラビ-ヤウ多様体として切断を有する三次元楕円カラビ-ヤウ多様体に対して、上記のボーチャーズ積の類似を研究した。積におけるすべての因子を求めるのは現時点では非常に困難であるので、先ず楕円ファイバー方向の数え上げ幾何に対応する因子を調べた。F理論との関係で言えば質量ゼロのBPS状態に対応する。具体的には楕円ファイバー方向の全ての種数に対するグロモフ-ウイッテン不変量が予想できたことになる。この予想の整合性を検証した。 次にカラビ-ヤウ多様体が楕円ファイバー構造のみならずK3ファイバー構造を有する場合を研究した。やはり、積におけるすべての因子を求めるのは非常に困難であるので、K3ファイバー方向の数え上げ幾何に対応する因子を調べた。この様なカラビ-ヤウ多様体にコンパクト化したF理論はK3上にコンパクト化した混成弦理論と双対関係にあることが予想されており、そのような混成弦理論の摂動的BPS状態に対応する。具体的にはK3ファイバー方向の全ての種数に対するグロモフ-ウイッテン不変量が予想できたことになる。この予想の整合性を検証した。 コンパクトな三次元カラビ-ヤウ多様体に対しては僅かな例外を除いて全ての種数に対するグロモフ-ウイッテン不変量の予想を立てることすら困難であったことを考えると、本研究の結果は現段階でも十分意義のあるものと思う。結果の詳細は現在論文として準備中である。しかしながら、この予想を完全に数学的にどう証明するかというのは今後の大きな課題である。
|