2005 Fiscal Year Annual Research Report
放物型偏微分方程式系のサンプル値制御に関する理論的・数値実験的研究
Project/Area Number |
16540111
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
佐野 英樹 鹿児島大学, 学術情報基盤センター, 助教授 (70278737)
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Keywords | 並流型熱交換器 / 境界フィードバック / 強連続半群 / スペクトル / 指数安定性 / 可観測性 / 可到達性 / 非負錐 |
Research Abstract |
二つの管から構成される境界入力を有する並流型熱交換器をモデル化する際に,熱拡散を考慮した場合には二つの移流拡散方程式,すなわち放物型偏微分方程式系によって記述される.本年度は,その熱拡散係数が十分小さく無視できる場合を取り上げた.熱拡散係数をゼロとおいた方程式は双曲型偏微分方程式系となり、開ループ系そのものが有限領域に固有値をもたないのでsuper-stableとなる.このように特殊な性質をもつシステムに対して,サンプラとゼロ次ホールドを取り付け離散的な制御をする前に,最も基本的と考えられる,連続的な境界フィードバックを施した閉ループ系の安定性について解析した.まず,フィードバックゲインに関するある条件のもとで,閉ループ系を記述する作用素が強連続半群を生成することを示した.つぎに,この閉ループ作業素が有限領域にも固有値をもつことを確認し,spectrum determined growth assumptionに関するHuangの結果(1985年)を用いて安定性を解析した.また,フィードバックゲインがある特異的な値をとるときには,有限領域に固有値が導けないことを理論的に解明し,MATLABを用いて数値実験的に検証した. さらに,境界入力を有するこの双曲型偏微分方程式系の可観測性ならびに可到達性について解析した.境界入力を有するこのシステムは入口にデルタ関数を配置したシステムとして,そして出口における出力はデルタ関数と温度分布の積の積分として捉えることができる.そこで,デルタ関数を2乗可積分関数で近似したシステムに着目し,二つの管の出口において両方の流体の温度が測定可能ならば可観測となり,どちらか一方のみが測定可能ならば状態空間の非負錐に関して可観測となることを示した.また,二つの管の両方の入口において温度制御が可能ならば可到達となり,どちらか一方のみが制御可能ならば状態空間の非負錐に関して可到達となることも明らかにした.
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