2005 Fiscal Year Annual Research Report
周期軌道の安定化問題におけるタイムラグの影響に関する研究
Project/Area Number |
16540187
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
宮崎 倫子 静岡大学, 工学部, 助教授 (40244660)
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Keywords | 時間遅れをもつ微分方程式 / フロッケの理論 / 軌道安定性 / Delayed feedback制御 |
Research Abstract |
周期軌道の安定化法のひとつに差の状態フィードバック(State Difference Feedback;SDF)が知られている.本研究の目的はSDFによる安定化メカニズムを数学的に解明することである.また,そのために必要となる時間遅れを持つ微分方程式(Deay Differential Equations;DDE)の周期軌道の安定性に関する定性的理論の整備も行う.特に,定性的理論については,既存の結果・理論(例えば,フロッケの理論)などが利用できるようにも思われるが,それらの多くがあまりに抽象的すぎるため,直面する具体的問題に対して適用する際,多くの困難に遭遇する.従って,本研究では,これら既存の結果を適用する際のプロセスなども明らかにする予定である. 今年度中の実績は以下のとおりである. 1.DDEにおける周期軌道の安定性を評価するための既存の理論を精査し,証明すべき定理をConjectureの形で表現した.具体的には,「1より大きなフロッケ乗数を持つならば軌道不安定となる」という命題である.この命題は,時間遅れがない場合から当然の結果として推察されるが,このことを明確に証明した文献は見当たらない.また,安定性の十分条件として,A.Stokesによって1964年に発表された定理の証明についても,2002年にS.Murakamiらによって明らかにされた理論的に不十分な定数変化法の考え方を用いており,証明に若干の修正が必要であることがわかった. 2.SDFにおいて,フィードバックゲインが単位行列の実数倍という限られた状況においては,フロッケ乗数を計算するための方程式を未制御状態のフロッケ乗数を用いることによって具体的に表現することができた.得られた方程式は超越関数であり,現段階では直ちに安定性を判定するまでには至っておらず,今後の解析が必要である. 3.SDFにおいて,未制御状態の周期軌道の非退化性を仮定した際に,制御状態の周期軌道の非退化性を上記2の前提の下で示すことができた.これは,安定性を示すために上記1で触れたStokesの結果を用いるために必要となる事項である.
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