2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540211
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
蜂巣 泉 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (90135533)
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Keywords | Ia型超新星 / 連星系の進化 / 超軟X線源 / 銀河の化学進化 / 質量降着白色矮星 / 新星風 / 標準光源 / 宇宙論パラメータ |
Research Abstract |
Ia型超新星の進化経路を考える上で、非常に重要な素過程として、質量降着新星風が伴星表面に衝突し、その表面を剥ぎ取る効果(mass stripping)を導入することの重要性に気づいた。 「新星風」が吹き、それが伴星表面にあたると、伴星表面からガスをはぎ取ることによって、質量移動が抑制される。この質量はぎ取りのメカニズムがはたらくと、6-7太陽質量と割と重い伴星を持った系でも、Ia型超新星に進化できることが判明した。この効果を取り入れた連星系の進化のプログラムをつくり、Ia型超新星を起こすことのできる連星の初期パラメータの範囲を再計算した。その結果判明したのは、連星形成時期から1億年程度と若いIa型超新星が全体の3割程度あってもよいこと、そのような若いIa型超新星の周りには伴星から吹き飛ばされた星周物質が存在する確率が高いこと、などである。 実は、このような傾向はごく最近のIa型超新星の観測から明らかになったことともつじつまがあっている。最近の超新星の頻度分布から、1億年程度と非常に若い年齢のIa型超新星と20-30億年以上と古いIa型超新星の2極分布(bimodality)になっていることが指摘されている。また、2002年には、Ia型超新星SN 2002icの周りに1-2太陽質量におよぶような星周物質の存在がla型超新星の水素の狭輝線の観測から判明した。その後、SN 2005gjなどでも同様の水素狭輝線が観測されているので、極端にめずらしい現象ではなくなった。私たちのモデルは、このような星周物質を持つIa型超新星は数パーセントあってもよいことを自然に説明する。また、白色矮星と主系列星のペアからなる連星系は、伴星が2-6太陽質量と重くなったことで、年齢が1億年程度と若いIa型超新星を説明できるし、白色矮星と小質量赤色巨星(〜1太陽質量)のペアからなる連星系は、30億年程度以上古いIa型超新星の親星となることができる。 今後は、私たちの提案する進化経路の精密化をはかると同時に、さらにIa型超新星への進化途上にある天体を理論的に特定していくことで、私たちのIa型超新星の進化モデルをより確定的なものにしていきたいと計画している。
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Research Products
(4 results)