2004 Fiscal Year Annual Research Report
有限温度・有限密度QCDにおけるカイラル相転移とハドロンの性質の研究
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16540241
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
原田 正康 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40311716)
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Keywords | 量子色力学(QCD) / カイラル対称性 / 低エネルギー有効理論 / シュビンーガー・ダイソン方程式 / ベーテ・サルピーター方程式 / D中間子 |
Research Abstract |
今年度は、有限温度・有限密度におけるハドロンの性質を調べる有効模型と近似方法の整備、また、新しい有効模型の構築を行いました。 1.π^+中間子とπ^0中間子の質量差のシュビンガー・ダイソン方程式とベーテ・サルピーター方程式を用いた解析 クウォークの伝播関数に対するシェビンガー・ダイソン方程式と中間子の波動関数に対するベーテ・サルピーター方程式を組み合わせ改良ラダー近似を用いて解く手法は、真空状態でのρ中間子の質量を定量的によく再現することが知られています。この手法を有限温度・有限密度に適用するためには、改良ラダー近似に現れるパラメーターを決める必要があります。これまでのこの手法を用いた研究では調べられていなかったπ^+中間子とπ^0中間子の質量差を含めた様々な物理量を解析し、パラメーターの値の決定を行いました。 (成果はPhysical Review Dに掲載) 2.新しいD中間子の崩壊過程の解析 昨年、アメリカのBabarとCLEO、日本のBelleといった実験において、第1励起状態のスカラー型と軸性ベクトル型と考えられるD中間子が新たに発見されました。昨年度は、この第1励起状態と基底状態との質量差を自発的カイラル対称性の破れから説明する有効模型を提案しました。今年度はこの有効模型を用いて第1励起状態にあるD中間子の崩壊過程を解析し、π中間子を2個放出して崩壊する過程において、他のグループから提案された有効模型との違いが顕著になることを示しました。 (成果はPhysical Review Dに掲載) 3.標準核子密度近傍での新たな有効理論の構築 π中間子に加え、核子のフェルミ面近傍での揺らぎの効果を取り入れた、標準核子密度領域で有用となる新しい有効理論を構築しました。そして、この理論における組織的低エネルギー展開の手法を提案し、それに基づき標準核子密度領域でのπ中間子の崩壊定数の密度依存性を調べ、他の有効理論を用いた場合よりも密度依存性が小さくなることを示しました。 (成果は論文にまとめ、現在投稿準備中)
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Research Products
(4 results)