2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540292
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
萱沼 洋輔 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (80124569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 智 大阪府立大学, 総合科学部, 助教授 (80236588)
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Keywords | 非断熱遷移 / 量子ダイナミックス / 内殻励起 / 超高速過程 / Landau-Zener公式 / 非断熱制御 / ヤーンテラー相互作用 / 積分方程式 |
Research Abstract |
(1)半導体の深い不純物準位における非断熱過程 半導体中の深い不純物準位でおきるキャリアの捕獲と熱放出の問題を、連続状態の関与する非断熱過程として扱う理論を構成した。局在準位の電子と、格子ひずみとの強い電子格子相互作用の結果、束縛状態が熱振動により連続状態にもぐり込み、電子遷移が起きる。格子振動をフォノンとして量子力学的に厳密に処理することにより、系の時間発展を記述する積分方程式を導き、数値的に解いた。得られた結果は、実験的に知られている捕獲断面積の値を半定量的に再現する。 (2)2正孔状態からの表面からの吸着原子離脱のダイナミックス 内殻電子励起に伴うオージェ崩壊の終状態で生じた2正孔局在状態から起きる吸着子の脱離ダイナミックスを、正孔の遍歴性、クーロン斥力、電子格子相互作用のすべてを取り込んで計算する手法を構築した。正孔同士の斥力相互作用が、重要な役割を果たしていることが判明した。 (3)量子ドット配列における電子の非断熱制御 量子コンピュータの素子qubitの実体として、結合した2つの量子ドットを用いる提案がなされている。この結合量子ドット中の電子の制御において、滑らかな外場のみを用いる新たな方法(非断熱制御)の提案を行った。2つの量子準位の交差を2回行うことで、非断熱遷移経路間の位相干渉を起こさせ、望むままのユニタリゲートが実現できること、およびそのパルス波形のデザインにZenerの行列が有効に使えることを示した。 (4)グラファイトにおける超高速緩和過程とX線発光スペクトル グラファイトの1s内殻から内殻励起子状態への共鳴励起にともなう再結合発光の実験の解析を行った。共鳴励起状態で、非占有軌道に上がった電子の(擬)ヤーンテラー効果により、ボンド切断型の原子移動が誘起され、これが発光スペクトルの低エネルギー側への裾構造をもたらす。すなわちこれが、X線領域のホットルミネッセンスである。クラスター・バイブロニックモデルによる数値計算の結果、観測された発光スペクトル形状、とくにその偏光依存性まで含めて、良く再現されることを見出した。また、クラスターモデルを越えて、電子のバンド内遍歴性まで取り込んだ定式化を行い、1次元モデルに対する予備的計算を行った。その結果、発光スペクトルの励起エネルギー依存性をうまく説明できることが判明した。
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