2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16540300
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 昌司 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90252551)
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Keywords | 1次元フェリ磁性体 / ナノスケール分子磁性体 / 核磁気緩和率 / 修正スピン波理論 / 多重マグノン散乱 / 数値対角化法 / 動的帯磁率 |
Research Abstract |
スピン波理論は,物質の磁気励起・磁気緩和過程を記述する上で極めて強力な手法であるが,ボーズ・アンサンブル特有の粒子数発散の困難があり,低次元系にこれを適用しても定量的知見は得られないとされてきた.そこで,粒子数の制御条件を課すことにより従来のスピン波理論を修正し,低次元磁性体の熱力学・動力学の定量的記述を試みようというのが,本研究の主題の1つである.研究初年度は,1次元のフェリ磁性体・強磁性体において,比熱・帯磁率など静的物理量の記述を行い,修正スピン波理論の低次元における高い信頼性・定量性を十二分に示した後,本研究の主題である動的物理量-核スピン-格子緩和率-の定式化に踏み出した. 2年度目においては,これを基礎として大規模数値計算をルーティン化し,複数の実験解釈に乗り出した.中でも特筆すべきは,本学内で専攻を一にする低温物理学研究室との共同研究である.九州大学の物質合成グループから擬1次元2重鎖幾何学フェリ磁性体Ca_3Cu_3(PO_4)_4の試料を取り寄せ,低温物理学研究室・古川博士がPサイトの緩和率測定、物性理論研究室の山本が理論解釈を試みた.その結果,交換相互作用を介したマグノン散乱により増幅された核スピンの新奇緩和過程が見事に立証された.成果は現在投稿中であり,今後実験研究分野へのさらなる波及効果が期待される. また現在,環状分子ナノ磁性体の0次元量子ダイナミクスに関して,全対角化,Lanczos対角化法による緩和率計算を進めている.最新の高速計算機を用いても数ヶ月に及ぶ計算であるが,3年度目には一段の展開が期待される.
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Research Products
(6 results)