2004 Fiscal Year Annual Research Report
コバルト系超伝導体の凝縮対対称性に対する最適化変分モンテカルロ法による研究
Project/Area Number |
16540306
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横山 寿敏 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60212304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小形 正男 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (60185501)
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Keywords | コバルト水和物 / 有機κ-ET塩 / ペアリング対称性 / 超伝導 / 変分モンテカルロ法 / t-Jモデル / 相分離 / 長岡強磁性 |
Research Abstract |
超伝導を示す、コバルト系物質Na_xCo_2・yH_2Oや有機固体κ-ET塩を念頭に、本年度は最適化及び従来の変分モンテカルロ法を用いて、主に単バンドの異方的三角格子上で、超伝導の性質の研究を行った。まず、超伝導のペアリング対称性を調べるために、最も単純なt-Jモデルに対して、射影BCS状態を用いて、各対称性の安定性を調べた。モデルの主なパラメーターは、交換相互作用J/t、格子の異方性t'/tと電子密度nである。念頭の系はバンド幅程度の電子間相互作用を持つので、典型値としてJ/t=0.3とした。電子密度は相関効果が最も利き、ET塩がとるハーフフィリング(n=1)から、コバルト系に近いクオーターフィリング(n=0.5)までを考えた。t'/tの値は、0(正方格子、銅酸化物超伝導体に対応)から1(コバルト系)を超えて1.2まで変化させた(ET塩は1前後と見られる)。また、粒子-ホール対称性が無いため、tの符号も重要である。超伝導状態の他に反強磁性状態、長岡強磁性状態、不均一な(相分離)状態なども考慮した。 結果は多岐に渡るので、以下幾つかの話題に的を絞る(詳細は発表文献参照)。まず、t<0では、ほぼ全電子密度で、かつJ/|t|<0.7程度の広範な領域で、長岡強磁性が安定になるため、超伝導の出現は大きく妨げられる。そこで以下t>0を考える。n=1でt'/tを0から増大させた場合、反強磁性状態は直ぐに不安定化し(超伝導との共存はt'/t<0.7で起こり得る)、t'/t<1ではd(x^2-y^2)波が安定になる。t'/t<=1で対称性はかd+id波へと転移する。これはET塩で置換基によってd(x^2-y^2)波とd(xy)波を取ることに対応する。コバルト系に対応する等方的三角格子(t'/t=1)で、ドープをすると、ハーフフィリング近傍(n>0.9)で、d+id波がd(x^2-y^2)波よりごく僅か安定化する。本年度の成果を基に、実験の展開を注意深く見守り、来年度以降研究を進めてゆく予定である。
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